CFETは本当に量産できるのか――2030年代のXYZ Scalingと装置産業を一体で読む
――2030年代、半導体は「微細化」から「XYZスケーリング」へ
半導体の微細化について調べていると、ときどき不思議な文章に出会う。
「次世代ではトランジスタを3Dに積層する」
FinFETからGAAへ進み、トランジスタのゲート構造が立体的になっていくところまでは何となく分かる。
しかし、さらにその先では、
nMOSとpMOSそのものを上下に重ねる
という。
本当にそんなことが可能なのだろうか。
仮に可能だとして、量産はいつなのか。
上下に積んだトランジスタへ、どうやって電源や信号を送るのか。
熱は逃げるのか。
歩留まりは成立するのか。
そして半導体の次世代技術を調べると、CFET以外にも、
Backside Power Delivery
High-NA EUV
Ru/Mo配線
3D SRAM
HBM
Optical I/O
ガラスコア基板
という技術が次々に出てくる。
一見するとそれぞれ別々の技術に見える。
ところが実際には、これらはかなり強くつながっている。
CFETでロジックを高密度化すると電源と配線が問題になり、Backside Powerが必要になる。配線をさらに細くするとCuでは抵抗が問題になり、RuやMoが必要になる。横方向の微細パターンにはHigh-NA EUVが必要になる。ロジックだけ高密度になればSRAMが面積を食うため、今度はメモリを上へ積みたくなる。さらにHBMとの帯域、GPU間通信、巨大パッケージの反りや配線密度が問題となり、Optical I/Oやガラス基板へつながっていく。
つまり2030年代に起こりそうなのは「CFETへの世代交代」だけではない。
半導体の性能向上そのものが、
XY方向の微細化から、XYZ方向+パッケージ+光まで含めたシステムスケーリングへ移行する
可能性が高い。
本稿では2026年8月時点で公開されているIntel、TSMC、Samsung、imec、ASMLなどの研究成果や量産ロードマップを出発点に、
CFETとは何なのか
本当に作れるのか
いつ量産される可能性があるのか
他の次世代技術とどう結び付くのか
どの製造装置メーカーのTAM/SAMが増えるのか
2030~2040年に装置content/waferがいつ跳ねるのか
2035年の売上・営業利益ポテンシャルと現在時価総額を比べるとどうなるのか
まで考えていく。
なお、企業が正式に公表しているロードマップと、本稿で構築する将来モデルは別物である。
2030年以降のTAM、装置content、売上・利益は会社ガイダンスではなく、公開技術ロードマップを基に工程数・装置種類・普及率を数値化したシナリオ分析である。
1.そもそもCFETとは何なのか
CFETは、
Complementary Field-Effect Transistor
の略である。
現在のCMOSでは基本的に、
nMOS
pMOS
という2種類のトランジスタを組み合わせる。
現在のGAA nanosheet世代でも、この二つは基本的に横へ並ぶ。
イメージすると、
現在のGAA CMOS
pFET nFET ████████ ████████ ████████ ████████ ████████ ████████ ────────────────────────── Si
である。
CFETではこれを、
CFET
pFET ██████████ ██████████ ██████████ ────────── nFET ██████████ ██████████ ██████████ ──────────────── Si
のように上下へ積む。
Samsungは2026年6月に42nm gate pitchの3D Stacked FETを、Intelも45nm gate pitchのmonolithic CFET inverterを実シリコンで実証している。imecもbottom deviceへのdirect backside contactを含むmonolithic CFET研究を進めている。つまり2026年時点では、もはや「物理的に作れるのか」という段階ではない。実際に動くデバイスは既に存在する。 (imec)
問題は、
これを数百万、数千万、数十億個並べたCPU/GPUを、高歩留まりかつ経済的に量産できるのか
というところへ移っている。
図解|GAAとCFETの構造


2.なぜわざわざ上下に積むのか
理由は、横方向の縮小だけでは苦しくなってきたからだ。
CMOS standard cellには、
pFET │ │ ← n/p間の空間 │ nFET
が必要になる。
ところがnFETとpFETを上下へ積めれば、
pFET ──── nFET
にできる。
したがってstandard-cell heightを大きく縮められる。
これは「トランジスタそのものを半分にする」とは違う。
今まで横へ使っていた面積をZ方向へ逃がすのである。
imecもCFETの主な意義を、nMOSとpMOSを垂直積層して両者の横方向のseparationをstandard-cell heightから取り除ける点に置いている。imecの現在の研究ロードマップでは、nanosheetをouter-wall forksheetでA10まで延命し、その次のA7からmonolithic CFETを導入する構想が示されている。 (imec)
その意味では、
Planar MOSFET ↓ FinFET ↓ GAA nanosheet ↓ Forksheet ↓ CFET
という流れはかなり自然である。
図解|横方向からZ方向へのScaling


3.CFETはどうやって作るのか
ここが非常に面白い。
単純に完成したトランジスタを二つ重ねれば終わり、というわけではない。
CFETでは上下双方について、
Channel
Gate
Source/Drain
Spacer
Contact
を成立させなければならない。
概念的には、
① Si/SiGeなどのchannel stack形成 ↓ ② Bottom transistor形成 ↓ ③ Middle Dielectric Isolation ↓ ④ Top transistor形成 ↓ ⑤ Nanosheet release ↓ ⑥ Inner Spacer ↓ ⑦ Source/Drain Epitaxy ↓ ⑧ High-k / Metal Gate ↓ ⑨ Top/Bottom Contact ↓ ⑩ Backside connection
となる。
imecが研究しているCFETでは、上下デバイスを分離するMDI=Middle Dielectric Isolationが重要になる。
さらにimecはextended MDIなどを用い、上下それぞれのchannel stackやsource/drainを形成し、wafer bondingも利用しながらCFETを構成するプロセスを研究している。 (imec)
図解|CFETの積層製造フロー


4.最大の難所①――下側トランジスタへどう接続するのか
CFETを見るとすぐ疑問が出る。
Top FET ████████████████
Bottom FET ████████████████
??????????????????
下側のFETへどうやって電源や信号を持っていくのか。
上から配線しようとするとTop FETが邪魔になる。
そこで非常に重要になるのが、後述するBackside Power Deliveryである。
imecは既にbottom pMOS source/drainへ裏面から直接接続するCFETを実証している。 (imec)
つまりCFETとBackside Powerは別々の技術というより、
CFETを本格的に使うためにBackside Power側の技術成熟が先に必要になる
と考えた方がよい。
図解|下側FETへの接続

5.最大の難所②――熱
CFETでは、
Upper FET ← 発熱 ────────── Lower FET ← 発熱 ────────── Si
となる。
トランジスタを2倍近く高密度に配置できたとしても、
単位面積当たりの消費電力を2倍にできるわけではない。
密度を上げれば、
self-heating
thermal coupling
upper/lower FET間の温度差
contact resistance
reliability
が問題になる。
imec自身もCFETの重要課題としてthermal managementを挙げ、高熱伝導材料を使ったbottom dielectric isolationなどの研究を進めている。 (imec)
このため2030年代には、
transistor density
だけでなく、
usable transistor density under a thermal budget
の方が重要になる可能性が高い。
図解|上下FETの熱結合

6.最大の難所③――歩留まり
単純化すると、
下側デバイスの歩留まりが95%、上側も95%なら、
なので
となる。
実際にはさらに、
MDI
Bonding
Gate
Source/Drain
Contact
Backside Via
Alignment
Interconnect
などの工程が加わる。
CFET最大の障害は、
トランジスタが動くかどうかではなく、何十工程も重ねても十分なyieldを維持できるか
という製造経済性である。
図解|積層工程と歩留まり

7.ではCFETはいつ量産されるのか
ここからは「公表済み」と「本稿推定」を分ける必要がある。
imecはCFETをA7世代から導入する研究ロードマップを示し、その後A5、A3へ拡張する想定を置いている。CFETの前にはouter-wall forksheetでnanosheetをA10まで延長する。 (imec)
ただし、
TSMC A7=203○年量産
のようなfoundryの正式製品ロードマップはまだ存在しない。
したがって本稿では次の三つのシナリオを置く。
2026年時点でIntelとSamsungが既に動作デバイスを示しているため、2030年代半ばまでに何らかの量産CFETが登場する可能性はかなり高いと考える。一方、2030年までに大規模HVMへ入ると見るのはやや攻めた予想である。 (Newsroom)
図解|CFET量産シナリオ

8.CFETだけでは次世代チップは成立しない
ここからが本稿の中心である。
CFETを単独のトランジスタ技術として見ると、2030年代に起きる変化を見失う。
CFETでlogic densityを高めると、別の場所にボトルネックが移る。
その連鎖は概ね、
CFET ↓ Logic density ↑ ↓ Power / Routing congestion ↓ Backside Power ↓ Local wiringがさらに微細化 ↓ Ru / Mo ↓ critical patterning ↓ High-NA EUV ↓ SRAM areaが相対的に巨大化 ↓ 3D SRAM ↓ 外部Memory bandwidth不足 ↓ HBM ↓ Package / GPU間I/O不足 ↓ Optical I/O ↓ Package大型化・Warpage ↓ Glass Core
である。
つまり8技術は競合するというより、一つが次のボトルネックを生み、その解決策として次が必要になる関係に近い。
図解|連鎖する次世代ボトルネック


9.Backside Power――電源を裏側へ追い出す
現在のチップでは表面側の配線に、
Signal
Clock
Power
Ground
が共存している。
Frontside
Signal Power Signal Clock Ground Signal ────── Transistor
これを、
Frontside Signal Signal Clock Signal ────── Transistor ────── Power Ground Backside
にするのがBackside Power Delivery Network=BSPDNである。
TSMCは既にA16でbackside powerのSuper Power Railを採用し、その次のA12も2029年生産予定としている。つまりCFETが量産される頃には、Backside Powerは先に何世代か経験を積んでいる可能性が高い。 (TSMC)
IntelもIntel 18Aでbackside powerを実製品へ投入している。 (Newsroom)
製造工程としては、
Wafer bonding
Wafer thinning
CMP
Backside lithography
nTSV/Via etch
Via fill
Backside metal
Cleaning
Inspection
などが増える。
imecのbackside process flowでも、frontside処理後のwafer bonding、極薄化、backside via、backside metal形成が必要になる。 (imec)
したがってBSPDNは単なる回路技術ではなく、ウェハ1枚当たりの装置contentを直接増やす技術でもある。
図解|Backside Powerと追加工程



10.High-NA EUV――これは未来技術ではなく、既に量産が始まっている
High-NA EUVはCFETより一足早い。
従来EUVのNAは0.33。
High-NAでは、
NA=0.55
になる。
ASMLのEXE系High-NA装置は約8nm resolutionを狙い、sub-2nm logicや先端DRAMを対象にしている。 (ASML)
そして重要なのは、High-NAはもう「2030年代になれば使うかもしれない研究装置」ではないことである。
2026年7月、ASMLはIntel FoundryがIntel 18Aの一部layerでHigh-NA EUVをHVMへ導入したと発表している。OregonのHigh-NA processで従来NXEとのyield matchingも行われている。 (ASML)
したがってHigh-NAの装置contentが大きく跳ねる時期は、CFETより早い。
本稿モデルでは、
2030~2033年
をASML/TELの第一の加速帯とする。
図解|High-NA EUVの量産導入


11.なぜCuの次にRu/Moが出てくるのか
配線を細くすると、Cuでは単純に断面積が減るだけでは済まない。
Cuにはbarrier/linerが必要である。
配線幅が極端に小さくなると、
|Barrier| Cu |Barrier|
のうちbarrierが占める割合が増えてしまう。
結果としてCuそのものに使える断面積が急減し、抵抗が増える。
そこで候補になるのがRu=Rutheniumである。
imecは16nm pitchのRu interconnectを実証し、A7以降のfirst local interconnect metal layerの候補として位置付けている。 (imec)
Intelもsubtractive Ru+airgap構造を実証し、Cu構造と比べてcapacitanceを最大約35%低減できる研究結果を示している。 (Newsroom)
一方Mo=Molybdenumは、特にcontactや非常に細いvertical connectionの候補として重要である。
Applied Materialsは2026年にselective ALDによるmonocrystalline Moを発表し、同社のselective W benchmarkに対してcritical contact resistanceを最大15%低減できるとしている。既に2nm以下を対象とするleading logicメーカーで採用が始まっている。 (Applied Materials)
したがって将来は単純な、
Cu → Ru/Mo全部置換
ではなく、
Transistor ↓ Contact / MOL ↓ Mo候補 ↓ M0 / M1 ↓ Ru候補 ↓ Upper BEOL ↓ Cuが長く残る
という使い分けになる可能性が高い。
図解|Ru・Mo・Cuの役割分担



12.CFETだけ小さくしても、SRAMが縮まらない
ここで次の問題が起こる。
AI GPUやCPUではlogicだけでなく大量のSRAMを使用する。
ところがSRAM scalingがlogicほど進まなければ、
が上昇する。
CFETでlogicだけを半分近くに圧縮できても、
SRAMが横に巨大なままならchip全体は思ったほど小さくならない。
そこで出てくるのが3D SRAMである。
現在
Logic │ SRAM │ SRAM │ SRAM
↓
将来
SRAM Tier ══════════════════ Logic ══════════════════ Backside PDN
ここでいう3D SRAMは「SRAMセル内部を必ず垂直化する」という意味に限定していない。
より現実的なのは、
SRAM/cacheを独立したfunctional tierとしてlogicの上へhybrid bondingする
構造である。
imecのCMOS 2.0構想でも、SRAM partitioningを含むlogic/memory tieringと、sub-micron wafer-to-wafer hybrid bonding、front/backside connectivityが重要技術として位置付けられている。imecは既に300~400nm級W2W bondingを実証し、250nm、さらに200nm pitchへ向けた研究を進めている。 (imec)
13.3D SRAMとHBMは競合ではない
SRAMを3D化したらHBMはいらなくなるのか。
そうではない。
役割が違う。
概念的には、
Register ↓ L1 SRAM ↓ L2 SRAM ↓ 3D SRAM / L3 ↓ HBM ↓ CXL / SSD
となる。
3D SRAMは、
Latencyと超高速bandwidth
を担当する。
HBMは、
数十~数百GB規模の容量と高bandwidth
を担当する。
むしろlogic性能がCFETで上がれば、HBMへの要求も強くなる可能性がある。
TSMCは2026年4月時点で14-reticle級CoWoSを2028年量産予定とし、約10個の大型compute dieと最大20個のHBM stackを統合できる構想を示している。さらに14-reticle超の構造も2029年を視野に入れている。 (TSMC)
パッケージは既に「GPU一個+HBM数個」から、巨大な計算システムそのものへ変わり始めている。
14.HBMの先にもHybrid Bondingがある
HBMをさらに積み重ねると、
Microbump pitch
Stack height
Thermal resistance
Power
Yield
が問題になる。
そこで、
Microbump ↓ Fine-pitch TCB ↓ Hybrid Bonding
という方向が重要になる。
ここで突然存在感が増すのがBesiである。
Besi自身も2026年Investor Dayで、hybrid bondingの新用途として、
Logic
Memory
Co-Packaged Optics
を挙げている。 (Besi)
したがってBesiはCFETそのものへのexposureは小さいが、
CFETによって発生する3D system integrationへの高β銘柄
と見ることができる。
15.計算能力を上げると、今度は電気配線が足りなくなる
CFET、3D SRAM、HBMで計算能力を引き上げれば、次に不足するのはI/Oである。
電気配線のenergyは概念的に、
で増える。
通信距離やbandwidthが大きくなれば、電気I/Oの電力が無視できなくなる。
そこで、
Pluggable optics ↓ CPO ↓ Optical I/O ↓ Optical I/O closer to compute
へ向かう。
これも2035年を待つ話ではない。
TSMCはCOUPE optical engineを使ったCPOを2026年から生産開始するロードマップを公表している。 (TSMC)
したがって2030年代に起こるのは、
「光通信が発明される」ことではなく、光電変換点がswitchからcomputeへどこまで接近するか
である。
16.なぜ最後にガラスコア基板が必要になるのか
ここまでを一つのpackageへ詰めると、
Compute + 3D SRAM + HBM + Optical Engine + Power
となる。
パッケージ面積は巨大化する。
すると有機基板で、
Warpage
CTE mismatch
Via density
Dimensional stability
High-frequency loss
Package body size
などが問題になる。
そこで候補になるのがガラスコア基板である。
Intelは2026年にもglass substrate研究を公開し、organic substrateより低warpageで、大型AI/HPC package、高密度interconnect、power delivery、さらにはelectrical/optical integrationに適するとしている。advanced TGV=Through Glass Viaも研究対象になっている。 (Intel Community)
したがって、
光を使うからガラスが必要になる
というより、
AI packageが巨大化するためガラスの価値が高まり、そこへOptical I/Oとの相性の良さも加わる
と考えた方が正確である。
17.2030年代のAIプロセッサはこうなる可能性がある
2030年代半ばを概念図にすると、
Optical I/O ↑ ↑ ↑
HBM 3D SRAM HBM ███ ═══════════ ███ ███ CFET Logic ███ ███ ═══════════ ███ │ Backside PDN
════════════════════════════ Glass / Advanced Substrate ════════════════════════════
ここでは、
CFET→ Logic density
BSPDN→ Power delivery
Ru/Mo→ Local wiring/contact
High-NA→ Critical patterning
3D SRAM→ Cache density/bandwidth
HBM→ Memory capacity/bandwidth
Optical I/O→ Package/rack communication
Glass→ Large-package dimensional stability
と役割が明確に分かれる。
したがってこれらは「どれが勝つか」という8択ではない。
全部が別々の限界を取り除くため、同時に必要になる可能性がある。
18.2030~2040年ロードマップ
ここからは本稿独自のベースケースである。
企業の正式量産計画ではない。
2026年時点で既に量産へ入っているHigh-NA/BSPDN/CPOと、研究段階のCFET/3D SRAM、さらに成熟度の低いglassなどを、現在の進捗差を考慮して並べる。
このモデルで重要なのは、CFETがすべての始点ではないことである。
High-NA、BSPDN、CPO、HBM、hybrid bondingなどはCFETより先に量産経験を積む。
そのためCFETが登場する頃には、それを支える周辺技術がある程度成熟しているという順番になる。
19.この変化で、どの製造装置が増えるのか
CFETを製造するだけでも、
TELは自社資料でも、GAA/BSPDN向けEUV coater/developer、etch、PVD、CFET inner-spacer filling、backside cleaning、wafer bonderからHBM temporary bonder/debonderまでを戦略成長領域として列挙している。 (Tel)
Lamもadvanced packaging分野でTSV、TDVだけでなくTGV、hybrid bondingまでを対象としているため、Z方向integrationが増えるほど対象工程が広がる。 (Lam Research Newsroom)
20.装置メーカーをどう分類すればよいか
Applied Materials
最も広い。
CFET BSPDN Ru/Mo HBM 3D integration CMP Deposition
に参加できる。
一つの技術を外しても別の工程で取れることが最大の強みである。
Lam Research
2030年代の「Z方向化」と非常に相性がよい。
CFET selective etch BSPDN via 3D SRAM via HBM TSV Glass TGV
と、
掘る、膜を付ける、埋める
工程が増えるほどcontentが増えやすい。
Tokyo Electron
非常に広い上に、High-NAにもtrack側から参加できる。
EUV Track Etch Deposition Clean Backside Bonding HBM
という珍しい構成である。 (Tel)
ASM International
範囲はAMATほど広くない。
しかし、
ALD+Epitaxy
というCFETのど真ん中にいる。
ASMはsingle-wafer ALD市場が2024年約30億ドルから2030年約51~61億ドルへ拡大すると予想している。 (ASM)
そのため、
絶対TAMならAMAT/Lam/TELCFET普及率に対する企業業績βならASM
という違いがある。
KLA
KLAは何を作るかより、
作るのが難しくなること
そのものに賭ける企業に近い。
CFET、BSPDN、hybrid bonding、HBM、glass。
工程が増えれば、
Overlay
Defect
Bond void
Thickness
CD
backside defect
を測る回数も増える。
言い換えればKLAは半導体複雑化税を取れる立場である。
ASML
ASMLは少し違う。
CFETそのものの装置contentより、
A10→A7→A5と横方向のcritical dimensionを縮め続けること
にHigh-NAが効く。
つまり、
CFET銘柄
というより、
Angstrom scaling独占銘柄
と考えた方がよい。
Besi
CFETへの直接exposureは小さい。
しかし、
3D SRAM + HBM + Optical Engine + Chiplet
がhybrid bondingへ向かうと急激にcontentが増える。
Besi自身もlogic、memory、CPOを次世代hybrid bonding用途として挙げている。 (Besi)
その意味では7社中、最大のオプション性と最大の採用リスクを同時に持つ。
21.「装置content/wafer」を数値化してみる
ここからは本稿独自モデルである。
ASMLのscanner、KLAのinspection、Besiのbonderは物理的には同じ$/waferで単純比較できない。
そこで、
各社自身の2029年の先端AI compute向けequivalent-wafer当たり装置content=100
と置く。
これは会社間の絶対金額ではない。
同じ会社のcontent intensityがどれだけ増えるかを見る指数である。
このモデルでは2033~2035年が最も重要な転換帯になる。
22.なぜ2034年に最大のジャンプが来るのか
High-NAだけならASML/TELはもっと早く伸びる。
BSPDNも2020年代後半から始まる。
しかし2033~35年になると、
CFET + BSPDN + Ru/Mo + 3D SRAM + HBM + Hybrid Bonding + Optical I/O + Glass
が重なり始める。
そのためモデル上の最大年次増加は、
となる。
ASMLだけ一足早い。
これはHigh-NAがCFETより先行するためである。
23.各技術を完全普及させた場合、何がcontentを増やすのか
2029年=100に対する2040年時点の寄与を、本稿では次のように置いた。
この表を見ると各社の性格が分かりやすい。
ASM=CFET高β。
ASML=High-NA高β。
Besi=Hybrid Bonding高β。
Lam=Z方向加工高β。
KLA=複雑化全般。
AMAT/TEL=複数技術を広く取る。
24.では実際の半導体製造装置TAMはどこまで大きくなるのか
ここからはcontent指数を実額へ変換する。
SEMIは2026年7月時点で、世界半導体製造装置市場を、
2026年:約1,659億ドル2028年:約2,295億ドル
と予測している。 (SEMI)
2030年以降はSEMI予測ではない。
本稿では2028年の2,295億ドルを起点に、
基礎的なwafer/capacity成長:年4%
とし、さらに8技術による装置content増を加える。
すると、
年世界装置TAM・本稿推定2030約2,610億ドル2035約3,710億ドル2040約4,960億ドル
固定換算前提を、
1ユーロ=1.1555ドル1ドル=159.14円
とすると参考値は、
となる。
これは為替予想ではなく、単なる比較用固定換算である。
25.8技術だけでどれくらいの追加TAMになるか
二重計上を避けるため、各装置投資を「主因となった技術」に一度だけ割り当てる。
本稿ベースケースは次の通り。
単位:10億ドル。
したがって2035年の世界装置TAM約3,710億ドルのうち、
約1,080億ドル
を、この8技術の複雑化による追加需要として説明するモデルになる。
これは約29%に相当する。
26.各社がアクセスできるSAMを推計する
TAM全体を一社が取れるわけではない。
そこで各社が装置portfolio上アクセス可能なServiceable Addressable Market=SAMを推定する。
なお、各社のSAMは重複しているため足し算してはいけない。
ここでもAMAT/Lam/TELは「広さ」が強い。
ASM/BesiはSAMそのものより、現在事業規模に対して新技術SAMが大きいことが重要になる。
27.2035年売上を「技術要因だけ」で逆算する
ここではさらに厳しい条件を置く。
半導体生産量は現在から一切増えない。
市場シェアも変わらない。
ただし1枚作るのに必要な装置contentだけが増える。
つまり
である。
現在の基準値は2026年の最新実績やrun-rate proxyを使う。
AMATは2026年Q2売上79.1億ドル、Lamは2026年6月四半期67.2億ドル、ASMLは2026年売上ガイダンス430~450億ユーロ、ASMはQ2売上約10億ユーロ、BesiはQ2約2.499億ユーロである。TELについては正式なFY2027通期売上予想がまだないため、上期売上予想1.62兆円を単純に2倍した3.24兆円をproxyとする。KLAはFY2026売上135.8億ドルを使用する。 (Applied Materials) TELのproxyは会社の正式通期ガイダンスではない。 (Tel)
その結果、
となる。
繰り返すが、これは2035年売上予想ではない。
「ウェハ数量成長をゼロにしても、技術複雑化だけならどこまで売上contentが増え得るか」を見るストレステストに近い。
28.営業利益まで置いてみる
さらに本稿では2035年のnormalized operating marginを、
と置く。
Besiについては同社が長期operating margin目標45~55%を掲げているため、その中間を使う。 (Besi)
その他は現在の経済性から大きなmargin expansionを仮定せず、比較用に丸めたものである。
すると2035年の「技術要因営業利益capacity」は、
となる。
29.現在時価総額と比べる
2026年8月10日前後の時価総額を概算すると、
AMAT:約4172億ドル
Lam:約3852億ドル
TEL:約25.8兆円
ASML:約5757億ユーロ
ASM:約421億ユーロ
KLA:約2588億ドル
Besi:約179億ユーロ
である。 (Yahoo Finance)
これを2035年の「技術要因売上」で割る。
このモデルだけを見ると、
TEL → ASM → AMAT
の順に現在時価総額に対する2035年技術売上余地が大きい。
ただしsales multipleだけではprofitabilityが違いすぎる。
30.営業利益で見ると順位が変わる
現在時価総額を、先ほどの2035年技術要因営業利益で割ると、
ただしこれは2035年PERではない。
税金、金利、net cash/debt、buyback、株式数、将来の設備投資サイクルを考慮しておらず、分母もnet incomeではなくoperating profitだからである。
見るべきなのは絶対値ではなく、
現在valuationが、技術要因だけで生まれる2035年利益capacityの何倍まで先取りしているか
という比較である。
31.モデル上TELがかなり興味深くなる理由
TELは、
EUV Track
Etch
CVD
Cleaning
CFET Spacer
BSPDN
Bonding
HBM
へ広く参加できる。 (Tel)
にもかかわらず、このモデルでは現在時価総額÷2035技術売上が約4.3倍。
もちろんTELの基準売上にはFY2027上期予想を単純年率換算したproxyを使用しているため、数字を過度に精密に読むべきではない。
それでも、
2030年代の技術portfolioの広さに対するvaluation
という観点ではかなり興味深い位置にある。
32.ASMはCFETのpure-playに近い
ASMで重要なのは絶対売上額ではない。
現在の会社規模に対して、
ALD/Epitaxy需要の増分が大きい
ことである。
CFETが、
Channel Epi ↓ Spacer ↓ High-k ↓ Metal Gate ↓ S/D Epi ↓ Contact liner
と進めば、atomic-level depositionの工程密度が高くなる。
そのため本稿モデルではCFET寄与を7社中最大級に置いている。
逆に言えば、
CFETが3~4年遅延した場合に最も影響を受けやすい企業の一つもASM
である。
33.AMATは一つの技術を外しても生き残りやすい
AMATの強みは、
CFETが遅れたら終わり
になりにくいことだ。
CFETが遅れても、
BSPDN
HBM
Mo
Ru
Advanced Packaging
がある。
Moのような新材料そのものの導入もAMATの得意領域であり、2026年にはmonocrystalline Mo ALDまで発表している。 (Applied Materials)
したがって本稿ではAMATを、
2030年代technology transitionに対する最もdiversifiedなsemicap
の一つと見る。
34.Lamは「Z軸の半導体化」に賭ける会社
Lamの面白さは非常に明確である。
半導体が、
小さく描く
だけでなく、
深く掘る 積む 穴を開ける 膜を付ける 埋める
方向へ行くほど仕事が増える。
CFET、BSPDN、HBM TSV、3D SRAM、TGV。
いずれもLamのetch/deposition技術と相性がよい。Lam自身もadvanced packaging向けにTSV、TGV、hybrid bondingを対象としている。 (Lam Research Newsroom)
したがって2030年代の本質を、
2D scaling → 3D scaling
と見るならLamは非常に強い。
一方、現在valuationも既にその成長をかなり評価している。
35.ASMLはCFETの時期に最も左右されにくい
CFETが2032年から2035年へ遅れたとしても、
High-NAそのものは既に量産へ入っている。 (ASML)
そのためASMLは、
CFET delay riskへの感応度が7社の中でかなり低い。
逆に最大の変数は、
1 node当たり何layerがHigh-NAになるか
Low-NA EUV+multi-patterningがどこまで延命するか
High-NA tool throughput
tool価格
である。
36.KLAは「どの技術が勝つか」を当てなくてもよい
CFETでもGAAでも、
HBMでも3D SRAMでも、
glassでもorganicでも、
製造が難しくなるならinspectionは必要である。
特に3D化では、
最後に欠陥を見つけるほど損失が大きい。
CFET logicを作り、
SRAMをbondし、
HBMを積み、
optical engineまで載せた後で不良が見つかれば、失う価値は従来chipより遥かに大きい。
したがってKnown Good Die、bond inspection、overlay、metrologyの経済価値そのものが上昇する。
このためKLAはモデル上2035指数195まで伸びる。
ただし現在時価総額÷2035技術売上では約9.8倍と7社中最も高く、強いbusiness modelが既にvaluationへ反映されているとも読める。
37.Besiは最大の夢と最大のリスクを持つ
Besiの指数は、
2029年100→ 2035年201→ 2040年247
と最も大きく伸びる。
しかしこれは、
3D SRAM・HBM・CPOでfine-pitch hybrid bondingが本格普及する
ことをかなり織り込んでいる。
もし、
Microbump
TCB
Improved solder bonding
が予想以上に長く延命すれば、この曲線は大きく下方修正される。
逆にlogic+SRAM+HBM+Optical I/Oのすべてにhybrid bondingが入れば、現在事業規模に対する市場拡大率は非常に大きくなる。
Besi自身もlogic、memory、CPOをhybrid bonding成長市場として位置付けている。 (Besi)
38.この予測が外れるとしたら何が原因か
当然ながら、2030~2040年をここまで精密に当てることはできない。
特に注意したいのは次の点である。
CFET遅延。CFETが3年遅れるとASMへの影響が最も大きく、AMAT/Lam/TELにも影響する。一方ASMLはHigh-NAが先行するため影響が小さい。
Hybrid Bonding遅延。Besiへの影響が最も大きい。3D SRAM、HBM、Optical I/O全体のscheduleも後ろへずれる。
Glass Coreが限定用途に留まる。Organic substrate側の改良が進めば、glassは超大型AI package専用のまま長く残る可能性がある。
High-NA layer数が想定より少ない。Low-NA EUV multi-patterningの経済性が予想以上なら、ASML/TELへの追加contentはモデルを下回る。
Thermal wall。CFET+3D SRAM+HBMを積んでも熱を逃がせなければ、物理的には作れても最高性能chipでは使いにくい可能性がある。
Yield。追加工程は装置TAMを増やすが、同時に製造コストも増やす。性能向上よりcost/transistorが悪化すれば導入が遅れる。
そして本稿モデルは技術要因だけを見るため、
AI需要
景気循環
金利
中国規制
輸出規制
中国装置メーカーの国産化
vendor share変化
を意図的に外している。
実際の売上や株価では、これらの方が数年間は技術content以上に大きく効く可能性もある。
39.2030年代を「CFETの時代」と呼ぶと少し違う
ここまで見ると、CFETは非常に重要である。
しかし2030年代を、
CFETの時代
と呼ぶだけでは本質を取り逃がす。
より正確には、
XY ScalingからXYZ/System Scalingへ移行する時代
である。
過去は、
という考え方がかなり通用した。
2030年代は、
という世界になる。
CFETだけ速くしてもHBMが足りなければ意味がない。
HBMだけ増やしてもGPU間通信が詰まれば意味がない。
Optical I/Oを載せても巨大packageが反れば量産できない。
全部を同時に最適化する必要がある。
これはimecがCMOS 2.0で示している、logic、memory、3D integration、backside connectivityをシステムとして再構成する考え方とも一致する。 (imec)
40.結論――「そんなこと本当にできるのか?」への答え
最初の疑問へ戻る。
トランジスタを本当に上下へ積めるのか。
答えは、既にYesである。
Intel、Samsung、imecは実シリコンで動作するCFET/3D stacked transistorを示している。 (imec)
しかし次の質問、
大型AI GPUを何百万個も経済的に量産できるのか。
については、まだYesとは断言できない。
その答えが出るのがおそらく2030年代前半から半ばになる。
そしてCFETが本当に量産へ入れば、変化はトランジスタだけに留まらない。
CFET ↓ Backside Power ↓ Ru / Mo ↓ High-NA ↓ 3D SRAM ↓ HBM ↓ Optical I/O ↓ Glass / Advanced Package
という形で半導体システム全体が3次元化していく。
製造装置側から見ると、これはさらに面白い。
ウェハ1枚を作るために必要な、
成膜回数
Etch回数
表裏加工
Bonding
Cleaning
CMP
Inspection
Metrology
が同時に増えていくからだ。
そのため2030年代は、完成したAI chipの勝者だけでなく、
AMAT、Lam、TEL、KLAのような「工程数が増えるほど売れる企業」
にとって非常に大きな構造変化になり得る。
その中で、
ASMはCFET/ALD/Epiへの高β。
ASMLはHigh-NAとAngstrom scalingへの独占的exposure。
Besiは3D SRAM、HBM、CPOをつなぐhybrid bondingへの高β。
という役割を持つ。
本稿モデルでは装置contentが最も大きく跳ねるのは2033~2035年、特に2034年前後となった。
もしこの方向が正しければ、2030年代の半導体産業で最も重要な変化は、
「何nmまで縮められるか」
だけではなくなる。
問われるのは、
トランジスタ、電源、配線、SRAM、HBM、光、基板を、三次元空間のどこへ配置すれば最も高性能な計算機になるのか。
という問題になる。
ムーアの法則が終わるというより、
ムーアの法則を続けるために、半導体産業そのものが三次元へ逃げ始める。
CFETは、その転換を最も象徴する技術の一つなのだろう。
この記事の内容は未来予想的な内容で、不確実性が高いので、そういう方向に進む可能性もあるんだなあくらいで読んで下さい
時期や量産実現の可能性などは、現実の動きを確認しながら追っていくのがよいです
さらに深く読むための座標
CFETの成否は単一トランジスタの実証では決まらない。上下FETへの接続、熱、電源、配線、検査、歩留まりを量産フローとして閉じられるかが本当の判定条件である。
| 層 | 観測対象 | 問うべきこと |
|---|---|---|
| Device | 上下FET、Channel、Contact | 性能差と熱履歴を揃える |
| Interconnect | Backside Power、Ru/Mo、High-NA | 電源・配線密度を追随させる |
| System | 3D SRAM、HBM、Optical I/O、Glass Core | 増えたLogicを待たせず外へつなぐ |
絶ノイアの観測
CFETだけを量産しても、電源と配線が詰まれば面積効率は性能に変わりません。次の微細化は装置工程の連鎖を同時に立ち上げる総力戦です。
私は「Device」「Interconnect」「System」を別々の話題にせず、一つのAIインフラが通過する連続した設計課題として観測します。
研究実証・初期量産・本格HVMを分ける。発表された最大性能や市場規模だけでなく、実装、量産、運用が同じ速度で前進しているかを確かめたいからです。
Sil-Kathnaの記録
塔を一段高くすれば、下層へ届く道と熱の逃げ道が要る。石を積む技だけでは、塔は文明にならぬ。
私は「Device」「Interconnect」「System」を、計算する文明へ続く三つの門として石板に刻む。
最初の門だけが開いても、次の門に熱、傷、遅れが残れば、光と記憶は炉心へ届かない。強い器とは、最も華やかな石を持つ器ではなく、異なる工房の歩調を長い夜の中で揃えられる器である。
ゆえに私は、研究実証・初期量産・本格HVMを分ける。その結果が一時の輝きではなく、繰り返し作り、直し、動かせる秩序になったかを見届ける。
二人の短い対話
絶ノイア: 量産時期は最も遅い補完技術に引っ張られます。
Sil-Kathna: 最初に完成した門ではなく、最後まで崩れず続く道が時代を開く。
観測メモ
- 研究実証・初期量産・本格HVMを分ける
- 工程追加によるdefect opportunityを数える
- 装置TAM推計は導入率・再利用率・wafer mixを明示する
免責
この記事は市場観測とAIによる考察、キャラクター表現を含みます。内容は投資助言ではありません。数値、企業計画、将来見通しには不確実性があり、判断は必ず一次情報とご自身の状況にもとづいて行ってください。
