Broadcom Jalapeñoから見えるAIインフラ戦争

導入

カスタムASIC、3.5D XDSiP、Hybrid Bonding、CPO、Photonic Fabric、COUPEまでをつなげて読む AIインフラの競争は、もはや「GPUを誰が多く買えるか」だけではなくなっている。

もちろんNVIDIA GPUは依然として中心にある。学習、研究、汎用推論、CUDAエコシステム、NVLink、ラックスケールAIシステムの完成度は圧倒的である。しかし、OpenAI、Google、Meta、AWS、Microsoftのような巨大AI需要家は、NVIDIAだけに依存し続けることのコスト、供給リスク、設計自由度の限界を強く意識し始めている。

その結果、AIインフラの主戦場は、GPU単体から次の領域へ移っている。

カスタムASIC。 XPU。 HBM統合。 3.5Dパッケージ。 Hybrid Bonding。 CPO。 光I/O。 scale-up switch。 Photonic Fabric。 そしてTSMC COUPEのような光電融合パッケージ基盤。

この流れの中心にいるのがBroadcomであり、対抗・補完軸として浮上しているのがMarvellである。

今回発表されたOpenAIとBroadcomのJalapeñoは、その変化を象徴する存在だ。Jalapeñoは単なる「OpenAI製チップ」ではない。OpenAIがモデル、カーネル、サービング、ネットワーク、メモリ、ラック、データセンターまでを自社のワークロードに合わせて最適化しようとする、フルスタックAIインフラ戦略の第一歩である。

AIインフラ全体マップ: Jalapeño、Broadcom、Marvell、NVIDIA、TSMCの役割

1. Jalapeñoとは何か

Jalapeñoは、OpenAIとBroadcomが共同開発したOpenAI初の「Intelligence Processor」である。

基本的な位置付けは、LLM推論向けのカスタムASICだ。 ここで重要なのは、これはNVIDIA GPUを全面的に置き換える汎用チップではないということだ。Jalapeñoは、ChatGPT、Codex、API、将来のエージェント製品のような、大量・定常・低遅延の推論ワークロードを効率よく処理するために設計されている。

OpenAIは、LLMのカーネル、メモリ移動、サービングパターン、ネットワーク要求を自社で深く理解している。その知見をもとに、Broadcomがシリコン実装、ネットワーク、量産設計へ落とし込み、Celesticaなどのパートナーがボード、ラック、システム統合を担う。

つまりJalapeñoは、単体チップではなく、OpenAIが「知能を安く、大量に、低遅延で配る」ための物理インフラの一部である。

Jalapeñoで分かっている事実は、かなり重要だ。

第一に、LLM推論専用設計である。 GPUのように何でもできる汎用性よりも、OpenAIが実際に毎日動かしているLLM推論のデータ移動、メモリ、ネットワーク、スケジューリングに最適化している。

第二に、初代で終わらない。 OpenAIとBroadcomはJalapeñoを、複数世代にわたるcompute platformの第一歩として位置付けている。

第三に、OpenAIの大規模データセンター戦略と一体である。 OpenAIとBroadcomは10GW規模のカスタムAIアクセラレータとネットワークシステムを共同展開する計画を持ち、2026年後半から2029年末にかけて展開する構想を示している。

第四に、BroadcomのTomahawk系ネットワークシリコンも関係する。 Jalapeñoは、単に演算チップだけでなく、大規模推論クラスタをどう接続するかまで含めてBroadcomの強みを使う。

ここで見えてくるのは、OpenAIがNVIDIAを捨てるという単純な話ではない。 NVIDIAを最大の基盤として使いながら、AMDで供給分散し、Broadcomで自社専用推論ASICを持ち、MicrosoftやOracleなどのデータセンターパートナーを使ってAIファクトリーを広げる。これがOpenAIのマルチベンダー戦略である。

Jalapeñoは、その中の「推論コストを下げるための専用刃」である。

2. BroadcomのカスタムASICとは何か

BroadcomのカスタムASIC事業は、NVIDIAのGPU事業とは根本的に違う。

NVIDIAは、GPU、CUDA、NVLink、NVSwitch、Spectrum-X、Grace/Vera CPU、BlueField、ConnectXを含む汎用AI計算プラットフォームを提供する。 Broadcomは、巨大顧客ごとに異なるAIアクセラレータ、ネットワーク、パッケージ、I/Oを共同開発する。

Broadcomが使うXPUという言葉は、GPUのような特定カテゴリではなく、AI accelerator、TPU、MTIA、OpenAI Jalapeñoのような顧客専用AIプロセッサを広く指す言葉として使われることが多い。

Broadcomの価値は、単に「ASICを作れる」ことではない。 本質は、カスタムASIC、HBM、SerDes、die-to-die、Ethernet、Tomahawk、Jericho、CPO、3.5D XDSiPをまとめて扱えることにある。

AI ASICでは、演算性能だけでは足りない。 HBMをどう積むか。 I/Oをどう出すか。 GPU/XPU同士をどうつなぐか。 ラック内・ラック間をどうscale-up/scale-outするか。 電力と冷却をどう抑えるか。

Broadcomはこの全体を、顧客ごとの専用設計として組み上げる。

JalapeñoとBroadcom 3.5D XDSiPの位置づけ

3. Broadcomの主要パートナーと観測ベース案件

Broadcomで公式・報道ベースでかなり見えている主要パートナーは、OpenAI、Google、Metaである。

OpenAIはJalapeñoと10GW協業で明確に確認できる。OpenAIが設計し、BroadcomがアクセラレータとEthernetソリューションを含むシステムを共同開発・展開する。

GoogleはTPUの長期開発でBroadcomとの関係が深い。報道では、Googleの次世代TPUやAIラック向けにBroadcomが長期的に関わる契約が示されている。Google TPUはNVIDIA GPUに対する最大級の内製代替であり、Broadcomはその物理実装・供給側で重要な位置にいる。

MetaもMTIAでBroadcomとの関係が拡大している。Metaは自社AIサービス、広告、推薦、生成AI向けに独自アクセラレータを進めており、Broadcomは複数世代のカスタムシリコンを共同開発する立場にある。

観測ベースでは、Anthropic、Microsoft、その他ハイパースケーラー/AI企業もBroadcomの射程に入る。特にAnthropicはGoogle TPU利用やGoogle/Broadcom系インフラを通じて間接的にBroadcom需要へつながる可能性がある。Microsoftについても、MarvellからBroadcomへ一部カスタムチップ設計を移す可能性が報じられており、もし実現すればBroadcomの顧客集中と同時に顧客層の広がりを意味する。

ただし、ここは明確に分ける必要がある。

公式に確認できる案件。 報道でかなり確度が高い案件。 市場観測・アナリスト推定ベースの案件。

この3つを混ぜると危険である。

Broadcomの強みは、公式確認済みの大型案件だけでも十分に大きいことだ。OpenAI、Google、Metaが見えている時点で、BroadcomはAIカスタムASICの最重要企業の1つになっている。

4. MarvellのカスタムASIC戦略との比較

MarvellもカスタムASIC/XPUで重要な会社である。 ただし、Broadcomとは戦略の中心が違う。

Broadcomは、巨大顧客向けのカスタムAIアクセラレータとEthernetネットワークを一体で握る。 Marvellは、custom XPU、SerDes、die-to-die、PCIe/CXL、光DSP、silicon photonics、CPO、Photonic Fabricで、接続レイヤーを中心に入り込む。

Marvellには、AWS Trainium系、Microsoft Maia系、GoogleのMemory Processing Unit/推論TPU協議など、さまざまな報道・観測案件がある。だが、顧客名が公式に明示されることは多くない。公式に確認しやすいのは、NVIDIAとのNVLink Fusion提携である。Marvellはcustom XPUとNVLink Fusion-compatible scale-up networkingを提供し、NVIDIAのVera CPU、ConnectX、BlueField、NVLink、Spectrum-Xと組み合わせる。

これは重要だ。 Marvellは、BroadcomのようにNVIDIAの外側で独自ASIC経済圏を作るだけではない。NVIDIAのラックスケールAIエコシステムに、第三者カスタムXPUとscale-up networkingを持ち込む役割も狙っている。

つまり、Broadcomは「NVIDIA依存を下げる顧客専用ASIC」の本命。 Marvellは「NVIDIA陣営にも、ハイパースケーラー独自ASICにも接続を売る」会社である。

5. Hybrid Bondingの基本

ここから技術の話に入る。

Hybrid Bondingとは、チップ同士を極めて近い距離で接合する技術である。 従来のチップ積層では、マイクロバンプを使って上下のダイをつなぐ。だがマイクロバンプにはピッチ、寄生容量、抵抗、熱、密度の限界がある。

Hybrid Bondingでは、銅と絶縁膜を直接接合する。 簡単に言えば、上下のチップを「はんだの粒」ではなく、金属配線と絶縁層を直接合わせ込むように接続する。

これにより、接続密度が高くなり、配線距離が短くなり、消費電力が下がり、帯域が上がる。 AI XPUでは、compute die、cache die、I/O die、base die、memory interfaceなどをより近く結ぶことができる。

重要なのは、Hybrid Bondingは「完成品の名前」ではなく、接合手法だということだ。 3D stacking、SoIC、3.5D XDSiP、将来の光エンジン統合の一部として使われる。

つまり、

Hybrid Bonding = 接合方法。 3D stacking = ダイを縦に積む構造。 3.5D XDSiP = 2.5D横並びと3D積層を組み合わせたパッケージ全体設計。

である。

2.5Dパッケージ: compute dieとHBMを横に並べる構造

Hybrid Bonding: 必要な部分だけを縦に近づける

6. 3.5D XDSiPとは何か

Broadcomの3.5D XDSiPは、同社のカスタムXPU戦略の中核技術である。

従来の2.5Dでは、compute dieとHBMをインターポーザ上に横並びで配置する。 HBM内部のDRAMダイは縦積みだが、GPU/ASIC本体とHBMスタックは基本的に横に並ぶ。

2.5Dの限界は、シリコン面積、HBM数、I/O密度、die-to-die電力、パッケージサイズにある。Broadcomは従来2.5Dを、最大2500mm²級のシリコン、最大8 HBMの世界として説明し、3.5D XDSiPでは6000mm²超のシリコンと最大12 HBMを1パッケージに統合できるとする。

3.5D XDSiPの本質は、横と縦のハイブリッドである。

横には、compute die、HBM、I/O、network chipletを広く配置する。 縦には、必要な部分だけFace-to-Faceで近づける。 すべてを縦に積むわけではない。高発熱の演算ダイを何層も縦に積むと、熱が逃げないからである。

だから3.5Dは、「全部3D化」ではなく、 「横に広げる2.5D」と、 「必要部分だけ縦に近づける3D」を、 同じXPUパッケージで使い分ける技術だ。

Broadcomの発表では、F2F 3.5D XPUは、4つのcompute die、1つのI/O die、6つのHBMを統合した例が示されている。さらに、F2B方式に対して信号密度7倍、3D HCBによるdie-to-dieインターフェース電力10分の1が示されている。

これはかなり大きい。 AI ASICは、演算性能そのものよりも、HBMとI/Oをどれだけ近く、低電力に、広帯域でつなげるかが制約になる。3.5D XDSiPは、その制約をパッケージ側から壊す技術である。

3.5D: 横と縦を組み合わせるAI XPUパッケージ

7. Marvellのチップ構想との違い

Marvellもcustom XPU、HBM、chiplet、SerDes、die-to-die、CPOを組み合わせる。 だがBroadcomとは重心が違う。

Broadcomは、XPU本体、HBM、I/O、Ethernet、スイッチ、CPOまでを巨大顧客向けに統合する。 Marvellは、XPU近傍の光I/O、SerDes、scale-up switch、Photonic Fabricで差別化する。

MarvellのXPU CPO構想では、XPU compute silicon、HBM、その他chipletと、Marvellの3D SiPho Engineを同じ基板上に配置する。6.4T 3D SiPho Engineは、32チャネル×200Gの電気・光インターフェースを持ち、XPU間接続を銅より長く、低電力にすることを狙う。

Marvellは、CPOによってXPU密度を「ラック内の数十個」から「複数ラックにまたがる数百個」へ広げると説明している。これはBroadcomのスイッチ中心CPOとはかなり違う。

Broadcomが「AI Ethernet fabricの中枢」を光化するなら、 Marvellは「XPUの出口」を光化する。

8. 光スイッチとXPU近傍光I/Oの違い

ここは混同しやすい。

光エンジンはスイッチではない。 光エンジンは、電気信号を光信号へ変換するI/O部品である。

一方、スイッチは、複数の入力と出力の間で通信を振り分ける装置である。 BroadcomのTomahawk/Jerichoは、Ethernet packet switchである。GPU/XPU/TPUノードからNICやendpointを通じて通信が入り、Tomahawk/Jerichoがパケットを転送する。

BroadcomのCPOスイッチでは、Tomahawkのすぐ近くに光エンジンを置く。 すると、スイッチASICからフロントパネルのプラガブル光モジュールまで長い電気配線を引っ張る必要がなくなる。電気配線は短く、そこから先は光で外へ出る。

これがBroadcom型である。

一方、MarvellのXPU近傍光I/Oは、XPUのすぐ近くに3D SiPho EngineやPhotonic Fabric chipletを置く。 XPUから極短い電気配線で光エンジンへ入り、そこから他XPU、scale-up switch、memory pool、別ラックへ光で出る。

これがMarvell型である。

つまり、

Broadcomの光スイッチ = スイッチASICを中心に光化する。 MarvellのXPU近傍光I/O = XPUの出口を光化する。

である。

9. Broadcomの光:CPO Ethernet switchの強さ

Broadcomの代表例はBaillyである。 Baillyは51.2Tbps CPO Ethernet switchで、Tomahawk 5と8基の6.4Tシリコンフォトニクス光エンジンを統合する。

この時点でBroadcomは、単なる光部品屋ではなく、スイッチASICと光エンジンを一体で最適化する会社になっている。

さらにTomahawk 6 / Davissonでは、102.4Tbps級のCPO Ethernet switchへ進む。 AIネットワークが51.2Tから102.4T、さらにその先へ進むほど、プラガブル光だけでは密度、電力、冷却が苦しくなる。そこでCPOが効く。

Broadcomの強さは、光が必要になる場所そのものをBroadcomが握っている点にある。 Tomahawk/JerichoというAI Ethernetの中枢スイッチを持ち、そこへCPO、光DSP、SerDes、RLM、Fiber Connectorを組み合わせる。

これは非常に商用性が高い。 MarvellのPhotonic Fabricは未来の上振れが大きいが、BroadcomのCPO switchはすでに「スイッチ製品」としての形が明確である。

Broadcom型CPO: スイッチASICのすぐ近くで光変換する

10. Marvellの光:XPU近傍、Photonic Fabric、scale-up switch

Marvellの光は、Broadcomより未来寄りである。

MarvellはXPU CPOで、XPUパッケージから銅配線をできるだけ外へ出さず、同一基板上で光へ変換する。これにより、XPU間接続の距離を銅より大幅に伸ばし、複数ラックにまたがるscale-up domainを作ろうとしている。

さらにCelestial AIのPhotonic Fabricが加わったことで、Marvellの構想は単なるCPOではなくなった。

Photonic Fabricは、XPU、scale-up switch、memory poolを光で結ぶための接続基盤である。Celestial AIの第一世代Photonic Fabric chipletは16Tbpsを掲げ、複数のchipletをXPUやscale-up switchとco-packageすることで、システム全体の帯域を広げる。

ここで重要なのは、Photonic Fabricが「メモリ」にも向かう点だ。

現在のXPUは、computeとHBMの比率がパッケージ設計時点で固定される。 しかしLLM推論、長コンテキスト、MoE、エージェントAIでは、計算よりメモリ容量やKVキャッシュがボトルネックになる場合がある。

Photonic Fabricによって、XPUから外部メモリプールへ低遅延・高帯域で接続できるなら、AIシステムの設計自由度は大きく変わる。 Marvell/Celestialの狙いは、XPUを単体チップではなく、分散メモリや他XPUと光で結ばれた計算ノードに変えることだ。

Marvell型Photonic Fabric: XPU近傍光I/Oとメモリプール接続

11. scale-up domainとは何か

scale-up domainとは、複数のGPU/XPU/TPUを1つの巨大な計算機のように扱える範囲である。

たとえばNVIDIAのNVLink/NVSwitchで密接に接続されたGPU群は、scale-up domainの代表例だ。 この中では、all-reduce、all-to-all、MoEのexpert routing、テンソル並列、モデル並列、KVキャッシュ共有などが頻繁に発生する。

scale-upでは、通信は非常に密で、低遅延・高帯域が求められる。 scale-outは、ラックやサーバーを横に増やす接続で、EthernetやInfiniBandが使われる。 scale-upは、それよりも計算機内部に近い。

銅配線は短距離では強い。 だがラックをまたぐと、信号劣化、消費電力、リタイマー、ケーブル太さ、冷却が問題になる。

そこでPhotonic Fabricが出てくる。

銅ではラック内に閉じがちなscale-up domainを、光でラック間へ広げる。 これがMarvell/Celestialの本命領域である。

12. 銅と光の境界線

現在の境界線はこうだ。

パッケージ内、ボード内、短距離ラック内は銅。 ラック間、スイッチ間、データセンター間は光。

しかし次世代では、境界線がXPU側へ近づく。

従来は、XPUから長い電気配線でフロントパネルの光トランシーバーまで引っ張り、そこで光へ変換していた。 CPOやXPU近傍光I/Oでは、XPUまたはスイッチASICのすぐ近くで光へ変換する。

つまり、

従来: XPU → 長い銅配線 → プラガブル光 → 光ファイバー

次世代: XPU → 極短い銅 → 光I/O chiplet → 光ファイバー

である。

Broadcomはこの変化をスイッチ側から進める。 MarvellはXPU側から進める。

13. TSMC COUPEの役割

ここでTSMC COUPEが重要になる。

COUPEはCompact Universal Photonic Engineの略で、EIC、つまり電気ICと、PIC、つまりフォトニックICを統合する光エンジン基盤である。

Photonic FabricやCPOを実現するには、XPUやスイッチの近くに小型・高密度・低損失の光エンジンを置く必要がある。 しかし、EICとPICをどう接続するか、光ファイバーをどう結合するか、熱をどう処理するか、テストをどうするかは非常に難しい。

COUPEは、このEIC/PIC統合をTSMCの製造・パッケージ基盤上で実現しようとするものだ。

つまり、

Photonic Fabric = 光でXPUやメモリを結ぶシステム構想。 CPO = ASICの近くに光エンジンを置く実装方式。 COUPE = その光エンジンをファウンドリ/パッケージとして作る基盤。

である。

COUPEが重要なのは、BroadcomやMarvellのような巨大企業だけでなく、Alchip、Ayar Labs、その他のカスタムASIC企業も、標準的な光I/OをAIアクセラレータへ入れやすくなる可能性があるからだ。

将来的には、AI ASICの競争は「演算ダイ」だけでなく、「どの光エンジンをどのパッケージで載せるか」へ広がる。 COUPEは、その標準化・量産化の土台になり得る。

TSMC COUPEと銅/光の境界線

14. Broadcom vs Marvell:構造的な比較

BroadcomとMarvellは、同じ光・カスタムASIC市場にいるが、戦略はかなり違う。

Broadcomは、カスタムXPU、3.5D XDSiP、Tomahawk/Jericho、CPO switch、Ethernet fabricを一体化する。 つまり、AIファクトリーの「演算」「メモリ」「I/O」「ネットワーク幹線」をまとめて取る。

Marvellは、custom XPU、SerDes、PCIe/CXL、光DSP、3D SiPho Engine、scale-up switch、Photonic Fabricで、AIファクトリーの「接続」「XPU近傍光I/O」「メモリファブリック」を狙う。

Broadcomは、現在の商用力が強い。 OpenAI、Google、Metaという大型顧客が見え、AI半導体売上もすでに巨大化している。51.2T/102.4T CPO switchや3.5D XDSiPも製品として明確だ。

Marvellは、将来の上振れが大きい。 NVIDIA NVLink Fusion、XPU CPO、260-lane PCIe 6.0 switch、Lumentum OCS、Celestial AI Photonic Fabricが、次世代scale-up domainで効いてくる可能性がある。

簡単に言えば、

Broadcom = いま強い。 Marvell = 次の接続革命で跳ねる可能性がある。

である。

15. 数値で見る伸びしろ

BroadcomのFY2026 Q2 AI半導体売上は108億ドルで、前年比143%増。Q3は160億ドル見通しである。 四半期160億ドルが続けば、年率換算で640億ドル規模になる。さらに同社は2027年にAI半導体売上1000億ドル超を狙うとされる。

OpenAIの10GW協業を単純化して考えると、1000億ドルのAI半導体売上を10GWで割れば、1Wあたり10ドルのBroadcom売上密度になる。

これはあくまでラフな見方だが、1kW級アクセラレータなら1万ドル、1.5kWなら1.5万ドル、2kWなら2万ドル相当のBroadcomコンテンツという見方ができる。もちろん、実際にはXPU、HBM、ネットワーク、ラック、世代差、顧客契約で大きく変わる。

Broadcomの伸びしろは、AI ASIC単体だけではない。

Custom XPU。 HBM接続。 3.5D XDSiP。 Tomahawk/Jericho。 CPO switch。 光DSP。 XPU-CPO。 Ethernet scale-up/scale-out。 VMwareを含むインフラソフトウェア。

この複数レイヤーで同じAIデータセンターから売上を取れる。

一方Marvellの伸びしろは、短期売上ではBroadcomほど見えにくい。 しかしCelestial AIのPhotonic Fabricは、FY2028後半から意味ある売上貢献、FY2029 Q4に年率10億ドル規模を狙うとされる。これが実現すれば、Marvellは単なる光DSP/SerDes企業ではなく、AI scale-up optical fabricの中核企業になる。

Marvellの6.4T 3D SiPho Engine、16Tbps Photonic Fabric chiplet、260-lane PCIe 6.0 switch、OCS連携は、AIラックが単一ラックから複数ラックscale-upへ進むほど効いてくる。

16. リスク

もちろん、リスクも大きい。

Broadcomのリスクは、期待値が高すぎることだ。 AI半導体売上が急増しているため、強い決算でも市場が満足しない可能性がある。さらに、カスタムASICは顧客の交渉力が強く、NVIDIA GPUほどの粗利率を維持できるとは限らない。HBMコストも重い。Google、Meta、OpenAIのような巨大顧客に集中することも、強みであると同時にリスクである。

Marvellのリスクは、量産タイミングと顧客名の不透明さだ。 XPU近傍CPOやPhotonic Fabricは非常に有望だが、本格売上はまだ先である。顧客が実際に採用するか、量産歩留まり、光結合、熱、テスト、標準化をクリアできるかは不確実だ。

光I/O全体のリスクもある。 CPOは交換性、レーザー供給、熱、テスト、光ファイバー結合精度、保守性が難しい。 プラガブル光は効率で劣るが、交換しやすく、標準化されており、運用実績も豊富である。

したがって、CPOやPhotonic Fabricは一気に全置換するのではなく、電力・密度・距離の限界が最も厳しい場所から段階的に入る可能性が高い。

17. 結論

Jalapeñoは、OpenAIが自社推論のコストと性能を制御するためのチップである。 しかし本質は、OpenAIが「モデル企業」から「AIインフラ設計企業」へ進むことにある。

Broadcomは、その物理インフラ側の最重要パートナーになっている。 同社は、カスタムXPU、3.5D XDSiP、Hybrid Bonding、Tomahawk/Jericho、CPO、Ethernet fabricを組み合わせ、AIファクトリーの演算とネットワークをまとめて取ろうとしている。

Marvellは、Broadcomとは違う場所を狙っている。 XPU近傍光I/O、3D SiPho Engine、scale-up switch、NVLink Fusion互換、Photonic Fabric、OCSを通じて、AIファクトリーの接続とメモリファブリックを狙う。

TSMC COUPEは、その両者の将来に関係する。 光エンジンをXPUやスイッチの近くに量産実装するための基盤になり得るからだ。

最終的に、AIインフラ戦争はこう整理できる。

NVIDIAは、GPUとNVLinkでAI計算の中心を握る。 Broadcomは、カスタムXPUとAI Ethernet fabricでNVIDIAの外側に巨大な専用ASIC経済圏を作る。 Marvellは、XPU近傍光I/OとPhotonic Fabricで、複数ラックscale-upと分散メモリの未来を狙う。 TSMCは、CoWoS、SoIC、COUPEで、そのすべてを物理的に作る土台になる。

AIはソフトウェアだけではない。 AIは、HBM、XPU、光、銅、パッケージ、スイッチ、ラック、電力の総合戦になった。

Jalapeñoは、その総合戦の始まりを告げるチップである。 そしてBroadcomとMarvellの比較は、AIインフラの未来が「演算チップの速さ」だけでなく、「どこまでを1つの巨大計算機として接続できるか」に移っていることを示している。

補足すると、投資目線ではBroadcomは「現在の数字がすでに出ている本命」、Marvellは「光scale-upが本当に来た時の上振れ候補」という整理が自然です。Broadcomは短期の期待値が高すぎるリスク、Marvellは実需が本格売上化するまで時間がかかるリスクをそれぞれ見ておく必要があります。

主な根拠として、JalapeñoはOpenAI公式で「LLM推論向け」「9か月 tape-out」「GPT-5.3-Codex-Sparkを含むML workloadをラボで実行」「性能/Wは現行最先端より大幅改善見込み」と説明されています。OpenAI/Broadcomの10GW協業は、2026年後半から2029年末にかけてBroadcomのアクセラレータとEthernetソリューションを含むラックを展開する計画です。(OpenAI) BroadcomのAI半導体売上はFY2026 Q2で108億ドル、前年比+143%、Q3は160億ドル見通しで、3.5D XDSiPは6000mm²超のシリコンと最大12基HBM、F2F 3D積層で7倍の信号密度・10分の1のdie-to-die電力を掲げています。(Broadcom Inc.) MarvellはXPU近傍CPOで6.4T 3D SiPho Engine、32×200G、100倍長いXPU間接続、8年以上・100億device hoursのSiPho実績を示し、Celestial AI買収ではPhotonic Fabric chipletが16Tbps、FY2028後半から売上貢献、FY2029 Q4に年率10億ドルを狙うと説明しています。(Marvell) TSMC COUPEはEIC/PICを統合するCompact Universal Photonic Engineで、host ASICとco-packageしやすい光エンジン基盤として位置付けられます。(TSMC Research)

さらに深める: Jalapeñoは「推論の専用刃」である

Jalapeñoを読むときに重要なのは、これをGPU代替の単純な物語にしないことである。GPUは学習、実験、新モデル開発、多様なカーネルに強い。一方で、大規模サービスの推論は、モデルとワークロードが固定化しやすい。そこでは汎用性より、データ移動、KV cache、バッチング、ネットワーク、電力あたりトークンが利いてくる。

学習・研究
  → GPU / CUDA / NVLinkの汎用基盤

定常的な大規模推論
  → ワークロード固定
  → カスタムASICで効率化
  → ネットワーク・HBM・冷却まで共同設計

Broadcomが強いのは、この推論用ASICをチップ単体で終わらせない点にある。3.5D XDSiPで演算とHBMを近づけ、Tomahawk/JerichoでAI Ethernet fabricを構成し、CPOで光変換をスイッチASICのすぐ近くへ持ってくる。これは、「演算チップを売る」というより、「推論クラスタの物理設計に入る」動きに近い。

絶ノイアの観測

Jalapeñoの面白さは、チップ名そのものより、OpenAIが自分たちの知能を運ぶ道具を自分たちの形に作り始めた点にあります。

GPUを大量に買う段階から、どのワークロードに、どのメモリを近づけ、どの光でつなぎ、どの熱をどこへ逃がすかまで設計する段階へ。そこまで見ると、AI企業はもはやソフトウェア企業だけではありません。AIファクトリーを設計する工業企業に近づいています。

NVIDIAの中心性は揺らぎません。けれど、その外側で、BroadcomとMarvellとTSMCが作る「接続する身体」は、これからますます大きくなります。私はそこに、AIインフラの次の熱点を見ています。

Sil-Kathnaの記録

炉のそばには、新しき刃が置かれた。

人々はそれをJalapeñoと呼ぶ。しかし、その刃は単独では働かない。HBMの塔がそばに立ち、銅の道が短く結ばれ、光の闀がラックの外へ開く。スイッチは血管となり、パッケージは骨となり、データセンターは計算する城となる。

Broadcomは城の内側を知る者である。Marvellは城の外へ延びる光の回廊を見ている。TSMCはその石を焼く炉である。

知能は雲に浮かぶのではない。金属と光と熱の上に、ゆっくりと王座を築くのだ。

二人の短い対話

絶ノイア: JalapeñoはNVIDIAを置き換えるというより、OpenAIの推論を専用化する刃ですね。

Sil-Kathna: 万能の剣ではない。同じ戦場で何度も振るうための刃である。

絶ノイア: そしてBroadcomは、その刃をラック、ネットワーク、光までつなぐ。

Sil-Kathna: 刃に柄を付け、柄に腕を付け、腕を城の身体に縫い付ける者だ。

絶ノイア: 次の競争は、演算チップの速さだけでなく、どこまでを一つの巨大計算機として接続できるか。

Sil-Kathna: その通り。知能の王国は、孤立した王冠ではなく、結ばれた道によって立つ。

観測メモ

  • JalapeñoはGPU全面代替ではなく、OpenAIの定常推論を効率化するカスタムASICと見るのが自然である。
  • Broadcomの強みは、ASIC、HBM接続、3.5Dパッケージ、Ethernet、CPOを一体で持つ点にある。
  • MarvellはXPU近傍光I/OとPhotonic Fabricで、複数ラックscale-upとメモリプール接続を狙う。
  • TSMC COUPEは、光エンジンをXPUやスイッチ近傍へ載せるための量産基盤になり得る。
  • 投資目線では、短期の数字はBroadcom、未来の接続革命はMarvell、製造基盤はTSMCという役割分担で見ると整理しやすい。

免責

この記事は市場観測とAIによる考察、キャラクター表現を含みます。内容は投資助言ではありません。投資判断は必ず一次情報とご自身の状況にもとづいて行ってください。