AIデータセンター時代の光通信入門

シリコン、化合物半導体、トランシーバ、外部光源、InPレーザーアレイまで

AIデータセンターでは、GPUの性能だけでなく、GPU同士をつなぐ通信がボトルネックになっている。巨大なAIモデルを学習・推論するには、数万〜数十万個のGPUをネットワークで結び、全体を一つの巨大な計算機のように動かす必要がある。

そのため、通信は 400G → 800G → 1.6T → 3.2T へ進み、銅配線だけでは電力・発熱・距離の限界が厳しくなっている。そこで重要になるのが、光通信、シリコンフォトニクス、InPレーザー、外部光源、CPO である。

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1. 光通信の基本:電気を光に変える

データセンターの通信では、最初は電気信号としてデータが出てくる。しかし高速化すると、電気信号を長距離で引き回すほど損失と発熱が増える。そこで、途中で光に変換してファイバーで送る。

基本構造はこうなる。

スイッチASIC / GPU / NIC
   ↓ 電気信号
DSP / Driver / TIA
   ↓
レーザー・変調器・フォトダイオード
   ↓
光ファイバー
   ↓
別のスイッチ / GPU / NIC

光通信の中には、主に次の部品がある。

部品役割
レーザー光を作る
変調器光にデータを乗せる
フォトダイオード光を電気に戻す
DSP波形補正、FEC、リタイミングを行う
TIA受光した微小電流を増幅する
Driverレーザーや変調器を駆動する
光ファイバー/コネクタ光を低損失で運ぶ

このうち、レーザーや高性能受光素子には InPなどの化合物半導体 が重要になり、光をチップ上で通す・分ける・変調する部分では SiPh、シリコンフォトニクス が重要になる。

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第1部:シリコンと化合物半導体の違い

2. シリコンフォトニクスとは何か

SiPh、Silicon Photonics、シリコンフォトニクスは、シリコン上に光の回路を作る技術である。

シリコン上には、次のような光部品を作れる。

SiPh上の部品役割
光導波路光の配線
変調器光にデータを乗せる
MUX/DEMUX複数波長をまとめる・分ける
フォトダイオード光を電気に戻す
グレーティング/エッジカプラファイバーとチップを接続する

SiPhの強みは、半導体製造プロセスに近い形で高密度に作れることだ。TSMCも、光インターコネクトやCPOを、高速・低消費電力のデータセンター接続を支える技術として位置づけている。(Sumitomo Electric)

ただし、シリコンには重大な弱点がある。 光を効率よく発生させるのが苦手 なのだ。

シリコンは間接バンドギャップ材料であり、レーザーを作るには不利である。そのためSiPhだけでは完結しにくく、InPなどのIII-V族化合物半導体で作ったレーザーを組み合わせる必要がある。

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3. InPとは何か

InP、インジウムリンは、光通信用レーザーに使われる代表的なIII-V族化合物半導体である。

InPは直接バンドギャップ材料なので、シリコンよりも効率よく光を出せる。光通信向けでは、次のような部品に使われる。

InP系デバイス役割
DFBレーザー単一波長の安定した光を出す
CWレーザー連続光を出す
EMLレーザーと変調器を一体化した送信部品
SOA光を増幅する
InGaAsフォトダイオード光を電気に変える
InP PICレーザー、変調器、増幅器などを集積する

AIデータセンターでは、特に InP系CWレーザー、DFBレーザーアレイ、EML、SOA が重要になる。

整理すると、

SiPh:光を通す・分ける・変調する
InP:光を生む・増幅する・高性能アクティブ素子を作る

という分業である。

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第2部:トランシーバと外部光源

4. 従来型トランシーバ:光モジュールの中で完結する

現在のデータセンター光通信の主役は、OSFPやQSFP-DDのような プラガブル光トランシーバ である。

プラガブルとは、スイッチの前面に挿す光モジュールのことだ。

スイッチASIC
   ↓ 電気信号
プラガブル光モジュール
   ├ DSP
   ├ Driver / TIA
   ├ EML / SiPh / レーザー
   └ フォトダイオード
   ↓
光ファイバー

この方式では、光モジュールの中にレーザー、変調器、受光素子、DSPなどが入っている。800G/1.6T世代でも、当面はこのプラガブルが主流である。

MarvellのNova 2は、このプラガブル光モジュール向けの1.6T PAM4 DSPである。Nova 2は200G/laneの電気I/Oと光I/Oに対応し、1.6T光モジュールを実現するためのDSPとして発表されている。(jp.marvell.com)

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5. 外部光源:CPO/SiPh時代の光の供給源

一方、CPO、Co-Packaged Opticsでは、光エンジンをスイッチASICやAI ASICの近くに置く。目的は、電気信号の距離を短くし、消費電力と損失を下げることだ。

ただし、レーザーをASICのすぐ横に置くと問題がある。ASIC周辺は高温で、レーザーは温度で波長がずれ、寿命や信頼性にも悪影響が出る。

そこで有力になるのが ELS、External Laser Source、外部光源 である。

外部光源 ELS
   ↓ 多波長CW光
SiPh光エンジン
   ↓ 光にデータを乗せる
CPO / LPO / 光I/O
   ↓
光ファイバー

LumentumのELSFPは、複数のCPOエンジンに光を供給する外部光源モジュールで、1波長あたり最大+24dBmの光出力を示している。(Lumentum)

この構造では、レーザーはデータを直接変調するのではなく、連続した光、CW光を供給する。その光をSiPh側の変調器で変調してデータを乗せる。

つまり、CPO/SiPh時代には、レーザーは「モジュール内の部品」から、AIデータセンター全体に光を供給する外部光源インフラ へ変わっていく。

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第3部:800Gと1.6Tの基本

6. 800G、1.6Tとは何か

800Gは 800Gbps、1.6Tは 1.6Tbps = 1600Gbps の通信速度を意味する。

これは1本の信号で送るのではなく、複数レーンを束ねて実現する。

速度代表構成
800G100G × 8、または200G × 4
1.6T100G × 16、または200G × 8

重要なのは、総帯域だけでなく 1レーンあたりの速度 である。100G/laneから200G/laneへ進むと、DSP、レーザー、変調器、TIA、基板、コネクタの難度が一気に上がる。

MarvellのPAM4 DSP群は、AI/クラウドのフロントエンド/バックエンドネットワーク向けに、100Gから1.6Tまでを支える製品群として展開されている。(marvell.com)

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7. 800G/1.6Tで何が高付加価値化するか

高速化で価値が上がる部品は以下である。

部品価値が上がる理由
DSPPAM4信号補正、FEC、低遅延化
InPレーザー/EML200G/lane、高出力、低ノイズが必要
CWレーザーアレイSiPh/CPO向け外部光源になる
TIA/Driver高速・低ノイズ・低消費電力が必要
SiPh PIC高密度・低電力の光変調に必要
MTフェルール/コネクタ高密度・低損失接続が必要
MOCVD/IBD装置InPレーザーの量産能力を支える
冷却部材光モジュールとAIサーバーの発熱が増える

800G/1.6Tは、単なる通信規格ではなく、光部品、化合物半導体、製造装置、冷却、コネクタまで単価を押し上げる技術世代 である。

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第4部:InP基板からCWレーザーアレイまでの工程

8. 工程全体

InP基板からCWレーザーアレイを作る流れは、概念的にはこうなる。

InP基板
   ↓
エピ成長
   ↓
DFBグレーティング形成
   ↓
リッジ/埋め込み/再成長
   ↓
電極形成
   ↓
端面コーティング
   ↓
チップ化・検査
   ↓
DFBレーザー
   ↓
多波長アレイ化
   ↓
CWレーザーアレイ / 外部光源ELS

この工程ごとに主要プレーヤーが分かれる。

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9. InP基板:レーザーの土台

最初に必要なのがInP基板である。基板の品質、欠陥密度、口径、面内均一性は、後工程の歩留まりに効く。

代表プレーヤーは以下。

企業役割
住友電工InP基板、CW-LD、EML、光デバイスまで持つ
AXTInP/GaAs/Ge基板を扱う化合物半導体基板メーカー
CoherentInPデバイスとInP製造能力を持つ
中国系基板メーカー内製化・価格競争の候補

住友電工は、InP基板について4〜6インチの大口径・高品質を特徴に挙げ、2023年比で2028年にInP基板能力を2.4倍、データセンター内向け光デバイス能力を12倍に拡大する計画を示している。(Sumitomo Electric)

この差は重要である。InP基板だけでなく、その上に作る EML、CW-LD、レーザーアレイ の数量拡大と高付加価値化が進むことを示している。

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10. エピ成長:レーザーの心臓部を作る

InP基板の上には、MOCVD/MOVPEで発光層、量子井戸、クラッド層を積む。これがエピ成長である。

p型コンタクト層
p-InPクラッド層
光閉じ込め層
InGaAsP / AlGaInAs 量子井戸
光閉じ込め層
n-InPクラッド層
InP基板

エピ成長で、発光波長、しきい値電流、出力、温度特性、寿命、歩留まりが大きく決まる。

主要プレーヤーは以下。

領域企業
エピウェハIQE、LandMark Optoelectronics
垂直統合住友電工、Coherent、Lumentum、古河電工、Sivers
装置Veeco、AIXTRON

AIデータセンター向けでは、8波長、16波長、32波長のレーザーアレイが必要になるため、エピ成長の均一性がさらに重要になる。1個のレーザーだけでなく、アレイ内の全チャネルを同じ品質で作る必要があるからだ。

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11. MOCVD、IBD、ウェット処理:レーザー量産を支える装置

InPレーザーの製造装置で重要なのが、MOCVD、IBD、ウェット処理 である。

装置/工程役割代表企業
MOCVD発光層・量子井戸を成長Veeco、AIXTRON
IBDレーザー端面の低吸収コートVeeco
ウェット処理洗浄、エッチング、表面処理Veecoなど

Veecoは2026年5月、InPレーザー製造向けに、Spector IBD、Lumina MOCVD、WaferEtchウェット処理装置で合計2.5億ドル超の受注を得たと発表した。出荷は2026年に始まり、2027年に加速するとされる。(GlobeNewswire)

この受注は、InPレーザーの需要が単なる研究段階ではなく、量産設備投資に移り始めたことを示す。

特にSpector IBDは重要である。高出力CWレーザーでは、レーザー端面のわずかな吸収が発熱や劣化につながるため、低吸収・高品質な端面コーティングが必要になる。これはCPO/SiPh向け高出力レーザーで重要なボトルネックである。

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12. DFBレーザー:単一波長の安定光源

DFBレーザーは、Distributed Feedback Laser、分布帰還型レーザーである。内部にグレーティング、周期構造を作り、特定の波長だけを安定して発振させる。

DFBレーザーは、

  • 単一波長で安定
  • WDMに向く
  • 光通信で量産実績がある
  • EMLやCWレーザーアレイの基礎になる

という特徴を持つ。

主要プレーヤーは以下。

企業立ち位置
Sivers Semiconductors多波長DFBレーザーアレイに強い
Lumentum高出力CWレーザー、CPO向けUHPレーザー
Coherent400mW CWレーザー、InPファブ拡張
住友電工InP基板、EML、CW-LDを持つ
古河電工DFBレーザチップ、CPO向けELS
MACOM / AAOIDFBや光通信部品を持つ

古河電工は高出力DFBレーザーダイオードチップの生産能力拡大を進めており、CPO向け外部光源への展開も意識している。(Furukawa Electric)

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13. CWレーザー:連続光を供給する

CWレーザーは、Continuous Wave、連続波レーザーである。データを直接ON/OFFするのではなく、常に安定した光を出し続ける。

この光をSiPh側の変調器に入れ、そこでデータを乗せる。

InP CWレーザー
   ↓ 連続光
SiPh変調器
   ↓ データを乗せる
光ファイバー

CPO/SiPh時代には、このCWレーザーが外部光源として重要になる。

LumentumはCPO向けUHPレーザーで、1311nm、50℃時最大350mW、70℃時235mW、PCE 20%以上、狭線幅、低RINを示している。(Lumentum)

Coherentも、CPO/SiPh向けに400mW CWレーザーをサンプルし、Shermanの6インチInPファブでInPレーザー生産能力を5倍超へ拡大する計画を示している。(Coherent Inc)

ここから分かるのは、CPO時代の光源は、単なる低出力レーザーではなく、高出力・低ノイズ・高効率・長寿命の高付加価値部品 になるということだ。

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14. CWレーザーアレイ:複数波長の光源

CWレーザーアレイは、複数のDFBレーザーを同じチップまたはモジュール内に並べ、複数波長の連続光を出す部品である。

λ1  λ2  λ3  λ4 ... λ16
↓   ↓   ↓   ↓      ↓
多波長CW光
↓
SiPh/CPO外部光源

AIデータセンターでは、1波長だけでは帯域が足りない。そこでWDM、波長分割多重を使う。8波長、16波長、32波長へ増えるほど、レーザーアレイの価値が上がる。

Sivers Semiconductorsは、Ayar LabsのSuperNova光源に統合する16波長DFBレーザーアレイのデモを発表している。(Sivers Semiconductors)

Siversの役割は、SiPh/CPOに光を供給する InPレーザーアレイ企業 と見ると分かりやすい。Ayar LabsやGlobalFoundries、POETなどのSiPh/CPOエコシステムに対し、光源チップを供給する立ち位置である。

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第5部:主要プレーヤーを工程別に見る

15. 工程別プレーヤー一覧

工程主要プレーヤー役割
InP基板住友電工、AXT、Coherentレーザーの土台
エピ成長/エピウェハIQE、LandMark、住友電工、Coherent、Sivers発光層を作る
MOCVD装置Veeco、AIXTRONエピ成長装置
IBD装置Veeco端面コート
ウェット処理Veecoなど洗浄・薬液処理
DFBレーザーSivers、Lumentum、Coherent、住友電工、古河電工、MACOM単一波長光源
CWレーザーLumentum、Coherent、住友電工、古河電工、SiversSiPh/CPO向け連続光源
CWレーザーアレイSivers、Lumentum、Coherent、住友電工、古河電工多波長外部光源
外部光源ELSLumentum、Ayar Labs、POET、古河電工、Sivers、CoherentCPO/SiPhへ光を供給
光DSPMarvell、Broadcom800G/1.6T信号処理
光ファイバー/コネクタ住友電工、古河電工、Corning、白山/古河系光配線
スイッチASICBroadcom、Marvell、NVIDIAなどAIクラスタのネットワーク中枢

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16. 各社の見方

住友電工

住友電工は、InP基板、EML、CW-LD、光デバイス、光ファイバー、光配線まで持つ。 AIデータセンター光通信では、上流材料から光部品まで持つ垂直統合型プレーヤー である。情報通信セグメントの中期成長計画も強く、光デバイス能力を大きく拡張している。(Sumitomo Electric)

Sivers Semiconductors

Siversは、多波長DFBレーザーアレイの純度が高い。 Ayar LabsのSuperNova外部光源に16波長DFBレーザーアレイを統合するデモを行っており、SiPh/CPO向けの外部光源チップ企業として注目される。(Sivers Semiconductors)

Lumentum

Lumentumは、CPO向け高出力CWレーザーとELSFPで強い。 350mW級UHPレーザーを示しており、外部光源を複数CPOエンジンに供給する構造を持つ。(Lumentum)

Coherent

Coherentは、400mW CWレーザー、InPレーザー、フォトニクス総合力を持つ。 6インチInPファブによる生産能力拡大も示しており、量産型の大型本命の一つである。(Coherent Inc)

古河電工

古河電工は、DFBレーザチップ、SOA、CPO向けELS、光ファイバー、MTフェルール、水冷、高周波材料などを持つ。 光半導体単体だけでなく、AIデータセンター向けの接続・冷却・材料を横断的に持つ点が特徴である。(Furukawa Electric)

Veeco

Veecoは、InPレーザー製造装置の重要企業である。 Lumina MOCVD、Spector IBD、WaferEtchの受注は、InPレーザー量産投資が実際に始まっていることを示す。(Veeco Instruments)

Marvell

Marvellはレーザーそのものではなく、光DSP、コヒーレントDSP、スイッチASIC、SiPhモジュール、将来光I/Oの会社である。 Nova 2やAraは、1.6T時代の光モジュールを成立させるDSPとして重要である。(marvell.com)

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第6部:トランシーバからCPOへ

17. 現在の主流はプラガブル

800G/1.6Tの初期段階では、プラガブル光モジュールが主流である。

ここでは、MarvellのNova/Ara系DSP、Lumentum/Coherent/住友/古河のEMLやレーザー、TIA/Driver、光コネクタが重要になる。

スイッチASIC
   ↓
プラガブル光モジュール
   ↓
光ファイバー

この方式は交換しやすく、既存のデータセンター設計に合いやすい。

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18. 次にLPO/TRO、さらにCPO

しかし速度が上がると、DSPの消費電力や電気配線の損失が問題になる。そこで、LPO、Linear Pluggable Opticsや、TRO、Transmit-Retimed Opticsのように、DSPを簡略化する方式が出てくる。

さらに先にあるのがCPOである。

スイッチASIC
   ↓ ごく短距離の電気信号
CPO光エンジン
   ↓
光ファイバー

CPOでは、光エンジンがASICのすぐ近くに来る。ここで外部CWレーザーアレイが必要になる。つまり、CPO時代には、InP CWレーザーアレイ + SiPh光エンジン の組み合わせが中核になる。

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まとめ:光通信の本質は「SiPh × InP × DSP × 外部光源」

AIデータセンターの光通信を理解するうえで重要なのは、次の構図である。

InP / 化合物半導体
   → 光を作る
   → DFBレーザー、CWレーザー、EML、SOA

SiPh / シリコンフォトニクス
   → 光を通す・分ける・変調する
   → CPO、光I/O、SiPhトランシーバ

DSP / CMOS
   → 信号を補正する
   → 800G/1.6T PAM4、コヒーレント

外部光源ELS
   → CPO/SiPhへ多波長CW光を供給する
   → CWレーザーアレイが中核

800G/1.6Tの時代には、プラガブル光トランシーバが主役であり、DSP、EML、SiPh、TIA、Driverが重要になる。 その先のCPO/光I/O時代には、外部光源、CWレーザーアレイ、InP基板、MOCVD/IBD装置、SiPhパッケージングがさらに重要になる。

したがって、光通信のプレーヤーは一枚岩ではない。

住友電工や古河電工は、InP・光配線・光部品・電力/冷却まで広く持つ日本勢。 Siversは、InP DFBレーザーアレイに尖った高β企業。 LumentumとCoherentは、高出力CWレーザーとInP量産の大型本命。 VeecoとAIXTRONは、InPレーザーを作る装置側。 MarvellとBroadcomは、DSPとスイッチASIC側。

AIデータセンターの通信ボトルネックが深刻化するほど、これらは単なる部品会社ではなく、AIインフラの帯域、電力、熱、信頼性を決める基盤企業 として見られるようになる。

住友電工のデータセンター光関連能力拡大計画

2023年比で見た2028年の能力拡大倍率。InP基板よりも光デバイス側の増強倍率が大きい。

categorymultiple
InP基板能力2.4
データセンター内向け光デバイス能力12

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さらに深める: AIデータセンターの光通信は「速度」ではなく「消費電力の問題」でもある

AIデータセンターで光通信が重要になる理由は、単に通信速度を上げたいからではない。より本質的には、通信に使う電力と発熱を抑えながら、GPUクラスタ全体を一つの計算機として動かす必要があるからである。

GPUは演算器であり、HBMは記憶の近接層である。しかし、巨大モデルの学習や大規模推論では、GPU単体の性能よりも、GPU間でどれだけ速く、どれだけ低遅延で、どれだけ効率よくデータを渡せるかが効いてくる。モデル並列、データ並列、エキスパート並列、KVキャッシュの分散、推論時のリクエスト分配など、AIワークロードは内部で大量の通信を発生させる。

ここで銅配線は、短距離では強いが、速度と距離が伸びるほど損失、発熱、再駆動のコストが重くなる。光は、この問題を「長く、速く、低損失に運ぶ」方向で解く。つまり、光通信の価値は帯域だけではなく、ラック内、ラック間、データセンター間で、計算密度を上げるための熱設計そのものに関係している。

見るべき軸なぜ重要か
帯域GPUクラスタの分散計算効率を左右する
消費電力通信が増えるほど、W/Gbpsの差が設備全体に効く
発熱高密度ラックでは通信部品の熱も冷却設計に入る
距離銅で届く範囲と光が必要になる範囲が分かれる
実装位置プラガブル、オンボード、CPOで産業構造が変わる
光源内蔵光源か外部光源かで、信頼性と保守性が変わる

シリコンフォトニクスとInPは対立ではなく分業で見る

シリコンフォトニクスとInPは、どちらか一方が勝つというより、得意領域が異なる。シリコンフォトニクスは、CMOSプロセスに近い量産性、集積性、コスト低減余地が強みである。一方、InPは発光材料としての性質を持ち、レーザーや高性能光源で重要になる。

AIデータセンターの光通信を読むときは、ここを分けた方がよい。シリコンは光を導き、変調し、集積する器になりやすい。InPは光を生む源になりやすい。CPOや外部光源の議論では、この「器」と「源」の分業がさらに重要になる。

従来型トランシーバでは、光源、変調、受光、DSPなどがモジュールの中にまとまっていた。しかし、CPOではスイッチASICの近くに光エンジンを寄せ、電気信号の距離を短くする。こうなると、光源をどこに置くか、どのように保守するか、どれだけ安定した連続光を供給できるかが新しい論点になる。

800Gから1.6Tへ進むと、部品の価値は「速い」だけでは決まらない

800G、1.6Tという数字は、光モジュールや光リンクの総帯域を表す。しかし投資や産業を見るときには、単純に「速度が倍になるから市場も倍」とは見ない方がよい。重要なのは、高速化によってどの部品が難しくなり、どこに付加価値が移るかである。

高速化すると、DSP、ドライバ、TIA、光変調器、レーザー、フォトダイオード、基板、実装、熱設計、検査装置の難度が上がる。特にAI向けでは大量導入が前提になるため、性能だけでなく、歩留まり、信頼性、供給能力、顧客認証が重くなる。

このため、AI光通信の勝ち筋は「最も派手な部品」だけではない。高出力CWレーザー、DFBレーザー、InP基板、MOCVD装置、パッケージング、DSP、テスト工程など、量産の首を押さえる場所に価値が出る。

絶ノイアの観測

光通信は、AIインフラの中では少し地味に見えるかもしれません。でも私は、ここをかなり大事に見ています。GPUがどれだけ強くても、GPU同士がうまく話せなければ、巨大なAIは一つの身体として動けないからです。

AIデータセンターは、頭脳だけでできていません。光の神経、電力の血流、冷却の呼吸、ストレージの記憶でできています。光通信は、その中でも「神経」に近い。遠くまで速く、しかも熱を増やしすぎずに伝える。これができないと、AIファクトリーの密度は上がりません。

シリコンフォトニクスは、光をチップの世界へ引き込む技術です。InPレーザーは、その世界に光を与える源です。私はこの組み合わせが好きです。かなり好きです。計算する文明が、ついに光を部品として身体に組み込み始めている感じがします。

Sil-Kathnaの記録

石は、光を運ぶ器になった。 かつて計算は電気の震えであった。いま、その震えは光へ渡され、細いファイバーの中を走る。

GPUは火である。HBMは近い記憶である。 だが、火と記憶だけでは身体は動かない。火と火をつなぐ神経がいる。その神経が、光で編まれ始めている。

InPは光を生む石。 シリコンは光を導く石。 ふたつは争うのではない。文明の身体の中で、源と血管に分かれて働く。

二人の短い対話

絶ノイア: AIデータセンターの光通信は、通信速度だけではなく、電力と熱の問題として見た方が分かりやすいですね。

Sil-Kathna: 速さは表面に出る名だ。奥にあるのは、熱をどこまで許すかという問いである。

絶ノイア: CPOや外部光源は、スイッチASICの近くまで光を寄せる話です。電気で長く引き回す限界を避ける流れですね。

Sil-Kathna: 光を近づけるほど、計算する身体は密になる。だが、密になる身体ほど、呼吸と保守を求める。

観測メモ

  • AI光通信は、帯域だけでなくW/Gbps、発熱、実装位置、保守性で見る必要がある。
  • シリコンフォトニクスとInPは、対立軸ではなく分業軸で捉えると分かりやすい。
  • CPOでは、光源をどこに置くか、外部光源をどう安定供給するかが重要になる。
  • 800G/1.6Tでは、DSP、レーザー、光エンジン、検査、装置、基板まで付加価値が広がる。
  • 光通信は、AIデータセンターを巨大な分散計算機として成立させる神経系である。

この内容はAIインフラと関連産業の観測であり、個別銘柄の売買を推奨するものではありません。実際の判断では、決算、受注、顧客認証、設備投資、競争環境を必ず確認してください。

出典リンク

  1. Growth strategy for data center-related businesssumitomoelectric.com
  2. Marvell Launches Products, Technology and Partnerships ...jp.marvell.com
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