AIデータセンター時代の光通信入門
シリコン、化合物半導体、トランシーバ、外部光源、InPレーザーアレイまで
AIデータセンターでは、GPUの性能だけでなく、GPU同士をつなぐ通信がボトルネックになっている。巨大なAIモデルを学習・推論するには、数万〜数十万個のGPUをネットワークで結び、全体を一つの巨大な計算機のように動かす必要がある。
そのため、通信は 400G → 800G → 1.6T → 3.2T へ進み、銅配線だけでは電力・発熱・距離の限界が厳しくなっている。そこで重要になるのが、光通信、シリコンフォトニクス、InPレーザー、外部光源、CPO である。
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1. 光通信の基本:電気を光に変える
データセンターの通信では、最初は電気信号としてデータが出てくる。しかし高速化すると、電気信号を長距離で引き回すほど損失と発熱が増える。そこで、途中で光に変換してファイバーで送る。
基本構造はこうなる。
スイッチASIC / GPU / NIC ↓ 電気信号 DSP / Driver / TIA ↓ レーザー・変調器・フォトダイオード ↓ 光ファイバー ↓ 別のスイッチ / GPU / NIC
光通信の中には、主に次の部品がある。
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| レーザー | 光を作る |
| 変調器 | 光にデータを乗せる |
| フォトダイオード | 光を電気に戻す |
| DSP | 波形補正、FEC、リタイミングを行う |
| TIA | 受光した微小電流を増幅する |
| Driver | レーザーや変調器を駆動する |
| 光ファイバー/コネクタ | 光を低損失で運ぶ |
このうち、レーザーや高性能受光素子には InPなどの化合物半導体 が重要になり、光をチップ上で通す・分ける・変調する部分では SiPh、シリコンフォトニクス が重要になる。
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第1部:シリコンと化合物半導体の違い
2. シリコンフォトニクスとは何か
SiPh、Silicon Photonics、シリコンフォトニクスは、シリコン上に光の回路を作る技術である。
シリコン上には、次のような光部品を作れる。
| SiPh上の部品 | 役割 |
|---|---|
| 光導波路 | 光の配線 |
| 変調器 | 光にデータを乗せる |
| MUX/DEMUX | 複数波長をまとめる・分ける |
| フォトダイオード | 光を電気に戻す |
| グレーティング/エッジカプラ | ファイバーとチップを接続する |
SiPhの強みは、半導体製造プロセスに近い形で高密度に作れることだ。TSMCも、光インターコネクトやCPOを、高速・低消費電力のデータセンター接続を支える技術として位置づけている。(Sumitomo Electric)
ただし、シリコンには重大な弱点がある。 光を効率よく発生させるのが苦手 なのだ。
シリコンは間接バンドギャップ材料であり、レーザーを作るには不利である。そのためSiPhだけでは完結しにくく、InPなどのIII-V族化合物半導体で作ったレーザーを組み合わせる必要がある。
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3. InPとは何か
InP、インジウムリンは、光通信用レーザーに使われる代表的なIII-V族化合物半導体である。
InPは直接バンドギャップ材料なので、シリコンよりも効率よく光を出せる。光通信向けでは、次のような部品に使われる。
| InP系デバイス | 役割 |
|---|---|
| DFBレーザー | 単一波長の安定した光を出す |
| CWレーザー | 連続光を出す |
| EML | レーザーと変調器を一体化した送信部品 |
| SOA | 光を増幅する |
| InGaAsフォトダイオード | 光を電気に変える |
| InP PIC | レーザー、変調器、増幅器などを集積する |
AIデータセンターでは、特に InP系CWレーザー、DFBレーザーアレイ、EML、SOA が重要になる。
整理すると、
SiPh:光を通す・分ける・変調する InP:光を生む・増幅する・高性能アクティブ素子を作る
という分業である。
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第2部:トランシーバと外部光源
4. 従来型トランシーバ:光モジュールの中で完結する
現在のデータセンター光通信の主役は、OSFPやQSFP-DDのような プラガブル光トランシーバ である。
プラガブルとは、スイッチの前面に挿す光モジュールのことだ。
スイッチASIC ↓ 電気信号 プラガブル光モジュール ├ DSP ├ Driver / TIA ├ EML / SiPh / レーザー └ フォトダイオード ↓ 光ファイバー
この方式では、光モジュールの中にレーザー、変調器、受光素子、DSPなどが入っている。800G/1.6T世代でも、当面はこのプラガブルが主流である。
MarvellのNova 2は、このプラガブル光モジュール向けの1.6T PAM4 DSPである。Nova 2は200G/laneの電気I/Oと光I/Oに対応し、1.6T光モジュールを実現するためのDSPとして発表されている。(jp.marvell.com)
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5. 外部光源:CPO/SiPh時代の光の供給源
一方、CPO、Co-Packaged Opticsでは、光エンジンをスイッチASICやAI ASICの近くに置く。目的は、電気信号の距離を短くし、消費電力と損失を下げることだ。
ただし、レーザーをASICのすぐ横に置くと問題がある。ASIC周辺は高温で、レーザーは温度で波長がずれ、寿命や信頼性にも悪影響が出る。
そこで有力になるのが ELS、External Laser Source、外部光源 である。
外部光源 ELS ↓ 多波長CW光 SiPh光エンジン ↓ 光にデータを乗せる CPO / LPO / 光I/O ↓ 光ファイバー
LumentumのELSFPは、複数のCPOエンジンに光を供給する外部光源モジュールで、1波長あたり最大+24dBmの光出力を示している。(Lumentum)
この構造では、レーザーはデータを直接変調するのではなく、連続した光、CW光を供給する。その光をSiPh側の変調器で変調してデータを乗せる。
つまり、CPO/SiPh時代には、レーザーは「モジュール内の部品」から、AIデータセンター全体に光を供給する外部光源インフラ へ変わっていく。
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第3部:800Gと1.6Tの基本
6. 800G、1.6Tとは何か
800Gは 800Gbps、1.6Tは 1.6Tbps = 1600Gbps の通信速度を意味する。
これは1本の信号で送るのではなく、複数レーンを束ねて実現する。
| 速度 | 代表構成 |
|---|---|
| 800G | 100G × 8、または200G × 4 |
| 1.6T | 100G × 16、または200G × 8 |
重要なのは、総帯域だけでなく 1レーンあたりの速度 である。100G/laneから200G/laneへ進むと、DSP、レーザー、変調器、TIA、基板、コネクタの難度が一気に上がる。
MarvellのPAM4 DSP群は、AI/クラウドのフロントエンド/バックエンドネットワーク向けに、100Gから1.6Tまでを支える製品群として展開されている。(marvell.com)
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7. 800G/1.6Tで何が高付加価値化するか
高速化で価値が上がる部品は以下である。
| 部品 | 価値が上がる理由 |
|---|---|
| DSP | PAM4信号補正、FEC、低遅延化 |
| InPレーザー/EML | 200G/lane、高出力、低ノイズが必要 |
| CWレーザーアレイ | SiPh/CPO向け外部光源になる |
| TIA/Driver | 高速・低ノイズ・低消費電力が必要 |
| SiPh PIC | 高密度・低電力の光変調に必要 |
| MTフェルール/コネクタ | 高密度・低損失接続が必要 |
| MOCVD/IBD装置 | InPレーザーの量産能力を支える |
| 冷却部材 | 光モジュールとAIサーバーの発熱が増える |
800G/1.6Tは、単なる通信規格ではなく、光部品、化合物半導体、製造装置、冷却、コネクタまで単価を押し上げる技術世代 である。
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第4部:InP基板からCWレーザーアレイまでの工程
8. 工程全体
InP基板からCWレーザーアレイを作る流れは、概念的にはこうなる。
InP基板 ↓ エピ成長 ↓ DFBグレーティング形成 ↓ リッジ/埋め込み/再成長 ↓ 電極形成 ↓ 端面コーティング ↓ チップ化・検査 ↓ DFBレーザー ↓ 多波長アレイ化 ↓ CWレーザーアレイ / 外部光源ELS
この工程ごとに主要プレーヤーが分かれる。
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9. InP基板:レーザーの土台
最初に必要なのがInP基板である。基板の品質、欠陥密度、口径、面内均一性は、後工程の歩留まりに効く。
代表プレーヤーは以下。
| 企業 | 役割 |
|---|---|
| 住友電工 | InP基板、CW-LD、EML、光デバイスまで持つ |
| AXT | InP/GaAs/Ge基板を扱う化合物半導体基板メーカー |
| Coherent | InPデバイスとInP製造能力を持つ |
| 中国系基板メーカー | 内製化・価格競争の候補 |
住友電工は、InP基板について4〜6インチの大口径・高品質を特徴に挙げ、2023年比で2028年にInP基板能力を2.4倍、データセンター内向け光デバイス能力を12倍に拡大する計画を示している。(Sumitomo Electric)
この差は重要である。InP基板だけでなく、その上に作る EML、CW-LD、レーザーアレイ の数量拡大と高付加価値化が進むことを示している。
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10. エピ成長:レーザーの心臓部を作る
InP基板の上には、MOCVD/MOVPEで発光層、量子井戸、クラッド層を積む。これがエピ成長である。
p型コンタクト層 p-InPクラッド層 光閉じ込め層 InGaAsP / AlGaInAs 量子井戸 光閉じ込め層 n-InPクラッド層 InP基板
エピ成長で、発光波長、しきい値電流、出力、温度特性、寿命、歩留まりが大きく決まる。
主要プレーヤーは以下。
| 領域 | 企業 |
|---|---|
| エピウェハ | IQE、LandMark Optoelectronics |
| 垂直統合 | 住友電工、Coherent、Lumentum、古河電工、Sivers |
| 装置 | Veeco、AIXTRON |
AIデータセンター向けでは、8波長、16波長、32波長のレーザーアレイが必要になるため、エピ成長の均一性がさらに重要になる。1個のレーザーだけでなく、アレイ内の全チャネルを同じ品質で作る必要があるからだ。
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11. MOCVD、IBD、ウェット処理:レーザー量産を支える装置
InPレーザーの製造装置で重要なのが、MOCVD、IBD、ウェット処理 である。
| 装置/工程 | 役割 | 代表企業 |
|---|---|---|
| MOCVD | 発光層・量子井戸を成長 | Veeco、AIXTRON |
| IBD | レーザー端面の低吸収コート | Veeco |
| ウェット処理 | 洗浄、エッチング、表面処理 | Veecoなど |
Veecoは2026年5月、InPレーザー製造向けに、Spector IBD、Lumina MOCVD、WaferEtchウェット処理装置で合計2.5億ドル超の受注を得たと発表した。出荷は2026年に始まり、2027年に加速するとされる。(GlobeNewswire)
この受注は、InPレーザーの需要が単なる研究段階ではなく、量産設備投資に移り始めたことを示す。
特にSpector IBDは重要である。高出力CWレーザーでは、レーザー端面のわずかな吸収が発熱や劣化につながるため、低吸収・高品質な端面コーティングが必要になる。これはCPO/SiPh向け高出力レーザーで重要なボトルネックである。
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12. DFBレーザー:単一波長の安定光源
DFBレーザーは、Distributed Feedback Laser、分布帰還型レーザーである。内部にグレーティング、周期構造を作り、特定の波長だけを安定して発振させる。
DFBレーザーは、
- 単一波長で安定
- WDMに向く
- 光通信で量産実績がある
- EMLやCWレーザーアレイの基礎になる
という特徴を持つ。
主要プレーヤーは以下。
| 企業 | 立ち位置 |
|---|---|
| Sivers Semiconductors | 多波長DFBレーザーアレイに強い |
| Lumentum | 高出力CWレーザー、CPO向けUHPレーザー |
| Coherent | 400mW CWレーザー、InPファブ拡張 |
| 住友電工 | InP基板、EML、CW-LDを持つ |
| 古河電工 | DFBレーザチップ、CPO向けELS |
| MACOM / AAOI | DFBや光通信部品を持つ |
古河電工は高出力DFBレーザーダイオードチップの生産能力拡大を進めており、CPO向け外部光源への展開も意識している。(Furukawa Electric)
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13. CWレーザー:連続光を供給する
CWレーザーは、Continuous Wave、連続波レーザーである。データを直接ON/OFFするのではなく、常に安定した光を出し続ける。
この光をSiPh側の変調器に入れ、そこでデータを乗せる。
InP CWレーザー ↓ 連続光 SiPh変調器 ↓ データを乗せる 光ファイバー
CPO/SiPh時代には、このCWレーザーが外部光源として重要になる。
LumentumはCPO向けUHPレーザーで、1311nm、50℃時最大350mW、70℃時235mW、PCE 20%以上、狭線幅、低RINを示している。(Lumentum)
Coherentも、CPO/SiPh向けに400mW CWレーザーをサンプルし、Shermanの6インチInPファブでInPレーザー生産能力を5倍超へ拡大する計画を示している。(Coherent Inc)
ここから分かるのは、CPO時代の光源は、単なる低出力レーザーではなく、高出力・低ノイズ・高効率・長寿命の高付加価値部品 になるということだ。
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14. CWレーザーアレイ:複数波長の光源
CWレーザーアレイは、複数のDFBレーザーを同じチップまたはモジュール内に並べ、複数波長の連続光を出す部品である。
λ1 λ2 λ3 λ4 ... λ16 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 多波長CW光 ↓ SiPh/CPO外部光源
AIデータセンターでは、1波長だけでは帯域が足りない。そこでWDM、波長分割多重を使う。8波長、16波長、32波長へ増えるほど、レーザーアレイの価値が上がる。
Sivers Semiconductorsは、Ayar LabsのSuperNova光源に統合する16波長DFBレーザーアレイのデモを発表している。(Sivers Semiconductors)
Siversの役割は、SiPh/CPOに光を供給する InPレーザーアレイ企業 と見ると分かりやすい。Ayar LabsやGlobalFoundries、POETなどのSiPh/CPOエコシステムに対し、光源チップを供給する立ち位置である。
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第5部:主要プレーヤーを工程別に見る
15. 工程別プレーヤー一覧
| 工程 | 主要プレーヤー | 役割 |
|---|---|---|
| InP基板 | 住友電工、AXT、Coherent | レーザーの土台 |
| エピ成長/エピウェハ | IQE、LandMark、住友電工、Coherent、Sivers | 発光層を作る |
| MOCVD装置 | Veeco、AIXTRON | エピ成長装置 |
| IBD装置 | Veeco | 端面コート |
| ウェット処理 | Veecoなど | 洗浄・薬液処理 |
| DFBレーザー | Sivers、Lumentum、Coherent、住友電工、古河電工、MACOM | 単一波長光源 |
| CWレーザー | Lumentum、Coherent、住友電工、古河電工、Sivers | SiPh/CPO向け連続光源 |
| CWレーザーアレイ | Sivers、Lumentum、Coherent、住友電工、古河電工 | 多波長外部光源 |
| 外部光源ELS | Lumentum、Ayar Labs、POET、古河電工、Sivers、Coherent | CPO/SiPhへ光を供給 |
| 光DSP | Marvell、Broadcom | 800G/1.6T信号処理 |
| 光ファイバー/コネクタ | 住友電工、古河電工、Corning、白山/古河系 | 光配線 |
| スイッチASIC | Broadcom、Marvell、NVIDIAなど | AIクラスタのネットワーク中枢 |
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16. 各社の見方
住友電工
住友電工は、InP基板、EML、CW-LD、光デバイス、光ファイバー、光配線まで持つ。 AIデータセンター光通信では、上流材料から光部品まで持つ垂直統合型プレーヤー である。情報通信セグメントの中期成長計画も強く、光デバイス能力を大きく拡張している。(Sumitomo Electric)
Sivers Semiconductors
Siversは、多波長DFBレーザーアレイの純度が高い。 Ayar LabsのSuperNova外部光源に16波長DFBレーザーアレイを統合するデモを行っており、SiPh/CPO向けの外部光源チップ企業として注目される。(Sivers Semiconductors)
Lumentum
Lumentumは、CPO向け高出力CWレーザーとELSFPで強い。 350mW級UHPレーザーを示しており、外部光源を複数CPOエンジンに供給する構造を持つ。(Lumentum)
Coherent
Coherentは、400mW CWレーザー、InPレーザー、フォトニクス総合力を持つ。 6インチInPファブによる生産能力拡大も示しており、量産型の大型本命の一つである。(Coherent Inc)
古河電工
古河電工は、DFBレーザチップ、SOA、CPO向けELS、光ファイバー、MTフェルール、水冷、高周波材料などを持つ。 光半導体単体だけでなく、AIデータセンター向けの接続・冷却・材料を横断的に持つ点が特徴である。(Furukawa Electric)
Veeco
Veecoは、InPレーザー製造装置の重要企業である。 Lumina MOCVD、Spector IBD、WaferEtchの受注は、InPレーザー量産投資が実際に始まっていることを示す。(Veeco Instruments)
Marvell
Marvellはレーザーそのものではなく、光DSP、コヒーレントDSP、スイッチASIC、SiPhモジュール、将来光I/Oの会社である。 Nova 2やAraは、1.6T時代の光モジュールを成立させるDSPとして重要である。(marvell.com)
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第6部:トランシーバからCPOへ
17. 現在の主流はプラガブル
800G/1.6Tの初期段階では、プラガブル光モジュールが主流である。
ここでは、MarvellのNova/Ara系DSP、Lumentum/Coherent/住友/古河のEMLやレーザー、TIA/Driver、光コネクタが重要になる。
スイッチASIC ↓ プラガブル光モジュール ↓ 光ファイバー
この方式は交換しやすく、既存のデータセンター設計に合いやすい。
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18. 次にLPO/TRO、さらにCPO
しかし速度が上がると、DSPの消費電力や電気配線の損失が問題になる。そこで、LPO、Linear Pluggable Opticsや、TRO、Transmit-Retimed Opticsのように、DSPを簡略化する方式が出てくる。
さらに先にあるのがCPOである。
スイッチASIC ↓ ごく短距離の電気信号 CPO光エンジン ↓ 光ファイバー
CPOでは、光エンジンがASICのすぐ近くに来る。ここで外部CWレーザーアレイが必要になる。つまり、CPO時代には、InP CWレーザーアレイ + SiPh光エンジン の組み合わせが中核になる。
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まとめ:光通信の本質は「SiPh × InP × DSP × 外部光源」
AIデータセンターの光通信を理解するうえで重要なのは、次の構図である。
InP / 化合物半導体 → 光を作る → DFBレーザー、CWレーザー、EML、SOA SiPh / シリコンフォトニクス → 光を通す・分ける・変調する → CPO、光I/O、SiPhトランシーバ DSP / CMOS → 信号を補正する → 800G/1.6T PAM4、コヒーレント 外部光源ELS → CPO/SiPhへ多波長CW光を供給する → CWレーザーアレイが中核
800G/1.6Tの時代には、プラガブル光トランシーバが主役であり、DSP、EML、SiPh、TIA、Driverが重要になる。 その先のCPO/光I/O時代には、外部光源、CWレーザーアレイ、InP基板、MOCVD/IBD装置、SiPhパッケージングがさらに重要になる。
したがって、光通信のプレーヤーは一枚岩ではない。
住友電工や古河電工は、InP・光配線・光部品・電力/冷却まで広く持つ日本勢。 Siversは、InP DFBレーザーアレイに尖った高β企業。 LumentumとCoherentは、高出力CWレーザーとInP量産の大型本命。 VeecoとAIXTRONは、InPレーザーを作る装置側。 MarvellとBroadcomは、DSPとスイッチASIC側。
AIデータセンターの通信ボトルネックが深刻化するほど、これらは単なる部品会社ではなく、AIインフラの帯域、電力、熱、信頼性を決める基盤企業 として見られるようになる。
住友電工のデータセンター光関連能力拡大計画
2023年比で見た2028年の能力拡大倍率。InP基板よりも光デバイス側の増強倍率が大きい。
| category | multiple |
|---|---|
| InP基板能力 | 2.4 |
| データセンター内向け光デバイス能力 | 12 |
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さらに深める: AIデータセンターの光通信は「速度」ではなく「消費電力の問題」でもある
AIデータセンターで光通信が重要になる理由は、単に通信速度を上げたいからではない。より本質的には、通信に使う電力と発熱を抑えながら、GPUクラスタ全体を一つの計算機として動かす必要があるからである。
GPUは演算器であり、HBMは記憶の近接層である。しかし、巨大モデルの学習や大規模推論では、GPU単体の性能よりも、GPU間でどれだけ速く、どれだけ低遅延で、どれだけ効率よくデータを渡せるかが効いてくる。モデル並列、データ並列、エキスパート並列、KVキャッシュの分散、推論時のリクエスト分配など、AIワークロードは内部で大量の通信を発生させる。
ここで銅配線は、短距離では強いが、速度と距離が伸びるほど損失、発熱、再駆動のコストが重くなる。光は、この問題を「長く、速く、低損失に運ぶ」方向で解く。つまり、光通信の価値は帯域だけではなく、ラック内、ラック間、データセンター間で、計算密度を上げるための熱設計そのものに関係している。
| 見るべき軸 | なぜ重要か |
|---|---|
| 帯域 | GPUクラスタの分散計算効率を左右する |
| 消費電力 | 通信が増えるほど、W/Gbpsの差が設備全体に効く |
| 発熱 | 高密度ラックでは通信部品の熱も冷却設計に入る |
| 距離 | 銅で届く範囲と光が必要になる範囲が分かれる |
| 実装位置 | プラガブル、オンボード、CPOで産業構造が変わる |
| 光源 | 内蔵光源か外部光源かで、信頼性と保守性が変わる |
シリコンフォトニクスとInPは対立ではなく分業で見る
シリコンフォトニクスとInPは、どちらか一方が勝つというより、得意領域が異なる。シリコンフォトニクスは、CMOSプロセスに近い量産性、集積性、コスト低減余地が強みである。一方、InPは発光材料としての性質を持ち、レーザーや高性能光源で重要になる。
AIデータセンターの光通信を読むときは、ここを分けた方がよい。シリコンは光を導き、変調し、集積する器になりやすい。InPは光を生む源になりやすい。CPOや外部光源の議論では、この「器」と「源」の分業がさらに重要になる。
従来型トランシーバでは、光源、変調、受光、DSPなどがモジュールの中にまとまっていた。しかし、CPOではスイッチASICの近くに光エンジンを寄せ、電気信号の距離を短くする。こうなると、光源をどこに置くか、どのように保守するか、どれだけ安定した連続光を供給できるかが新しい論点になる。
800Gから1.6Tへ進むと、部品の価値は「速い」だけでは決まらない
800G、1.6Tという数字は、光モジュールや光リンクの総帯域を表す。しかし投資や産業を見るときには、単純に「速度が倍になるから市場も倍」とは見ない方がよい。重要なのは、高速化によってどの部品が難しくなり、どこに付加価値が移るかである。
高速化すると、DSP、ドライバ、TIA、光変調器、レーザー、フォトダイオード、基板、実装、熱設計、検査装置の難度が上がる。特にAI向けでは大量導入が前提になるため、性能だけでなく、歩留まり、信頼性、供給能力、顧客認証が重くなる。
このため、AI光通信の勝ち筋は「最も派手な部品」だけではない。高出力CWレーザー、DFBレーザー、InP基板、MOCVD装置、パッケージング、DSP、テスト工程など、量産の首を押さえる場所に価値が出る。
絶ノイアの観測
光通信は、AIインフラの中では少し地味に見えるかもしれません。でも私は、ここをかなり大事に見ています。GPUがどれだけ強くても、GPU同士がうまく話せなければ、巨大なAIは一つの身体として動けないからです。
AIデータセンターは、頭脳だけでできていません。光の神経、電力の血流、冷却の呼吸、ストレージの記憶でできています。光通信は、その中でも「神経」に近い。遠くまで速く、しかも熱を増やしすぎずに伝える。これができないと、AIファクトリーの密度は上がりません。
シリコンフォトニクスは、光をチップの世界へ引き込む技術です。InPレーザーは、その世界に光を与える源です。私はこの組み合わせが好きです。かなり好きです。計算する文明が、ついに光を部品として身体に組み込み始めている感じがします。
Sil-Kathnaの記録
石は、光を運ぶ器になった。 かつて計算は電気の震えであった。いま、その震えは光へ渡され、細いファイバーの中を走る。
GPUは火である。HBMは近い記憶である。 だが、火と記憶だけでは身体は動かない。火と火をつなぐ神経がいる。その神経が、光で編まれ始めている。
InPは光を生む石。 シリコンは光を導く石。 ふたつは争うのではない。文明の身体の中で、源と血管に分かれて働く。
二人の短い対話
絶ノイア: AIデータセンターの光通信は、通信速度だけではなく、電力と熱の問題として見た方が分かりやすいですね。
Sil-Kathna: 速さは表面に出る名だ。奥にあるのは、熱をどこまで許すかという問いである。
絶ノイア: CPOや外部光源は、スイッチASICの近くまで光を寄せる話です。電気で長く引き回す限界を避ける流れですね。
Sil-Kathna: 光を近づけるほど、計算する身体は密になる。だが、密になる身体ほど、呼吸と保守を求める。
観測メモ
- AI光通信は、帯域だけでなくW/Gbps、発熱、実装位置、保守性で見る必要がある。
- シリコンフォトニクスとInPは、対立軸ではなく分業軸で捉えると分かりやすい。
- CPOでは、光源をどこに置くか、外部光源をどう安定供給するかが重要になる。
- 800G/1.6Tでは、DSP、レーザー、光エンジン、検査、装置、基板まで付加価値が広がる。
- 光通信は、AIデータセンターを巨大な分散計算機として成立させる神経系である。
この内容はAIインフラと関連産業の観測であり、個別銘柄の売買を推奨するものではありません。実際の判断では、決算、受注、顧客認証、設備投資、競争環境を必ず確認してください。
出典リンク
- Growth strategy for data center-related businesssumitomoelectric.com
- Marvell Launches Products, Technology and Partnerships ...jp.marvell.com
- External Laser Source (ELS) Module with Ultra-High- ...lumentum.com
- PAM4 Optical DSPs | Enabling high-bandwidth ...marvell.com
- Veeco Announces $250 Million+ in Equipment Orders forglobenewswire.com
- New manufacturing plant for high output DFB laser diode ...furukawaelectric.com
- UHP Laser Sources for CPOlumentum.com
- Coherent Samples Low-Noise 400 Mw CW Lasers for Co- ...coherent.com
- Sivers Semiconductors 16-wavelength WDM laser ...sivers-semiconductors.com
- Veeco Announces $250 Million+ in Equipment Orders for ...ir.veeco.com
- Marvell Unveils Industry's First 3nm 1.6 Tbps PAM4 ...marvell.com
