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第8章 MOS構造――酸化膜の門が開く

AI半導体 メモリ

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第8章 MOS構造――酸化膜の門が開く / 表紙
第8章 MOS構造――酸化膜の門が開く / 表紙

第8章 MOS構造――酸化膜の門が開く

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前章では、キルビーが回路部品を一つの半導体材料へ統合し、ノイスがプレーナ工程と金属薄膜配線によって、それを繰り返し製造できる構造へ変えた過程を見た。

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1960年にフェアチャイルドで動作した初期のプレーナICは、主としてバイポーラトランジスタで構成されていた。

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バイポーラトランジスタは、高速で増幅能力が高く、当時すでに製造経験も蓄積されていた。最初の実用ICがこの方式から始まったのは自然なことだった。

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しかし、回路へ載せるトランジスタの数をさらに増やそうとすると、別の問題が現れた。

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バイポーラトランジスタでは、エミッタ、ベース、コレクタという複数の不純物領域を正確に作り、素子同士をp-n接合で分離し、動作中にはベースへ電流を流し続けなければならない。

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回路が大きくなるほど、素子の分離、配線、消費電力、発熱が重くなる。

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集積回路には、もっと単純で、もっと小さく、電流ではなく電界によって開閉できるトランジスタが必要だった。

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その構造がMOSである。

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Metal 金属ゲート

#

Oxide 酸化膜

#

Semiconductor 半導体

#

金属、酸化膜、半導体。

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この三層を重ねた構造は、後に世界で最も多く作られるトランジスタの基礎となる。

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酸化膜は、ここで単なる保護膜ではなくなった。

#

電気を遮断しながら、電界だけを半導体へ伝える門

#

になったのである。

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1.最初のICは、バイポーラトランジスタから始まった

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図解: 1.最初のICは、バイポーラトランジスタから始まった
図解: 1.最初のICは、バイポーラトランジスタから始まった

ノイスのモノリシックICと、ラストのチームが製造したプレーナICは、拡散によって作られたバイポーラトランジスタを中心としていた。

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典型的なn-p-n型では、n型コレクタの中へp型ベースを作り、その中へn型エミッタを作る。

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n型エミッタ
──────────
p型ベース
──────────
n型コレクタ
#

エミッタからベースへ電子を注入し、薄いベースを通過した電子をコレクタで回収する。小さなベース電流を使って、より大きなコレクタ電流を制御する仕組みである。

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この方式は高速で、初期のコンピューターや軍用機器に適していた。

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一方で、一つのトランジスタを動かすためにベース電流が必要となり、多数のトランジスタを同時に集積すると、消費電力と発熱が増えやすかった。

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また、同じシリコン上の素子が基板を通じてつながらないよう、深い拡散層や接合分離を作らなければならなかった。

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初期ICを成立させた技術は、そのまま無限に集積度を高められる完成形ではなかった。

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2.電界で電流を制御する発想は、トランジスタより古かった

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MOSトランジスタの基本思想は、1947年の点接触トランジスタより前から存在していた。

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1920年代、ジュリアス・エドガー・リリエンフェルトは、半導体中を流れる電流を、第三の電極が作る電界によって制御する装置を特許化した。

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1925年に出願された構想では、二端子間を流れる電流へ第三の電位を作用させ、真空管のような増幅作用を固体中で得ることが目指されていた。後の特許には、制御電極と半導体の間へ絶縁層を置く考え方も含まれていた。(Google Patents)

#

発想を単純化すると、次のようになる。

#
電流の入口
ソース
   │
   ├────半導体────┤
   │               │
                 ドレイン
                 電流の出口
#
↑
   電界を加える
      ゲート
#

ゲートを機械的に動かすのではない。

#

ゲート電圧によって半導体内部の電子状態を変え、ソースとドレインの間を流れる電流を増減させる。

#

原理だけを見れば、現代のMOSFETに極めて近い。

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しかし、リリエンフェルトの時代には、高純度半導体、安定した絶縁膜、清浄な界面を作る技術がなかった。

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構想はあっても、再現性のある装置として実現できなかった。

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3.ショックレーも、最初は電界効果を狙っていた

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図解: 3.ショックレーも、最初は電界効果を狙っていた
図解: 3.ショックレーも、最初は電界効果を狙っていた

ベル研究所が第二次世界大戦後に固体増幅器を研究した際、ショックレーが最初に考えた方法の一つも、半導体表面へ電界を加えて内部の電流を制御する方式だった。

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真空管では、グリッド電極へ加える電圧によって、カソードからプレートへ流れる電子を制御できる。

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それならば、半導体でも表面へ電極を置き、電界で電子を引き寄せたり遠ざけたりすればよいと考えられた。

#

ところが、実験では期待したほど電流が変化しなかった。

#

電極へ電圧を加えても、電界が半導体内部へ十分に届かなかったのである。

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この失敗が、バーディーンによる表面状態の研究と、最終的な点接触トランジスタの発見へつながった。(CHM)

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4.表面には、電界を捕まえる「罠」があった

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図解: 4.表面には、電界を捕まえる「罠」があった
図解: 4.表面には、電界を捕まえる「罠」があった

結晶の内部では、シリコン原子は規則正しく並び、隣の原子と結合している。

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しかし表面では、結晶が途中で切れている。

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内部なら別の原子と結合するはずだった電子が、結合相手を失った状態になる。この未結合手や欠陥に起因する電子状態が、広い意味で表面状態と呼ばれる。

#

結晶内部

#
Si―Si―Si―Si
│  │  │  │
Si―Si―Si―Si
#

結晶表面

#
Si―Si―Si―Si
│  │  │  │
↑ 表面で結合が途切れる
#

表面状態は電子や正孔を捕らえ、固定電荷のように振る舞う。

#

ゲート電極から電界を加えても、まず表面の罠が電荷を捕らえる。その結果、外部から加えた電界が遮蔽され、半導体内部のキャリア濃度を思いどおりに変えられない。

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バーディーンは1946年、ショックレーの電界効果装置が働かない原因を、この半導体表面の電子状態によって説明した。(CHM)

#
ゲート電界
      ↓
表面状態が電荷を捕獲
      ↓
電界が遮蔽される
      ↓
内部の電子濃度が変わらない
#

電界効果トランジスタに必要だったのは、新しい回路理論だけではなかった。

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結晶表面を電気的に安定させる材料技術だった。

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5.酸化膜は、表面を覆うだけでは不十分だった

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図解: 5.酸化膜は、表面を覆うだけでは不十分だった
図解: 5.酸化膜は、表面を覆うだけでは不十分だった

シリコン表面には自然に薄い酸化物が形成される。

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しかし、自然にできた不均一な酸化膜や、汚染を含む界面では、表面状態を十分に抑えられない。

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必要だったのは、

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均一な厚さを持つ

#

シリコンへ強く密着する

#

電気をほとんど通さない

#

界面の欠陥が少ない

#

熱処理や薬品処理に耐える

#

高品質な絶縁膜だった。

#

シリコンを制御された酸素または水蒸気中で高温処理すると、シリコン自身が酸素と反応し、二酸化シリコン膜へ変わる。

#
シリコン+酸素
        ↓
二酸化シリコン
#

Si+O₂ → SiO₂

#

重要なのは、別の絶縁材料を表面へ接着するのではなく、シリコン表面そのものを酸化して膜を成長させることである。

#

これによって、シリコンと絶縁膜の境界を比較的均一に作れる可能性が生まれた。

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6.アタラ――酸化膜でシリコン表面を安定させる

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図解: 6.アタラ――酸化膜でシリコン表面を安定させる
図解: 6.アタラ――酸化膜でシリコン表面を安定させる

ベル研究所のモハメド・M・アタラは、熱酸化したシリコン表面と、シリコン・二酸化シリコン界面の電気的性質を研究した。

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アタラらは、適切に形成した熱酸化膜によって、シリコン表面の電子状態を大幅に抑え、表面特性を安定させられることを示した。

#

1959年に発表された論文では、熱酸化の過程、酸化膜の性質、シリコン・酸化膜界面の電子的性質、デバイスへの応用がまとめられている。(Wiley Online Library)

#

これは、プレーナ工程とMOS構造の両方に関わる成果だった。

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プレーナ工程では

#
二酸化シリコン膜
        ↓
接合端を汚染から守る
#

MOS構造では

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金属ゲート
──────────
二酸化シリコン
──────────
シリコン
        ↓
ゲート電界を安定して伝える
#

同じ酸化膜が、一方では保護膜となり、もう一方では電界を伝える絶縁膜となった。

#

ホーニが酸化膜を残すべき保護膜として利用したのに対し、アタラとカーンは酸化膜を電界を通す制御層として利用したのである。

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7.カーン――実際に電界で動くトランジスタを作る

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図解: 7.カーン――実際に電界で動くトランジスタを作る
図解: 7.カーン――実際に電界で動くトランジスタを作る

1959年、アタラとダウォン・カーンはベル研究所で、熱酸化膜を使った絶縁ゲート型電界効果トランジスタを試作した。

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装置は1959年に作られ、1960年の学会で公表された。リリエンフェルトらが数十年前に描いた電界効果トランジスタが、ようやく実際に動作する素子となった。(CHM)

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基本構造は次のとおりだった。

#
金属ゲート
      ═══════════
         酸化膜
      ███████████
n型領域             n型領域
ソース              ドレイン
   ┌───┐          ┌───┐
───┘   └──────────┘   └───
          p型シリコン
#

ソースとドレインは半導体中に作られている。

#

その間には、最初から導電性の高いn型領域が連続しているわけではない。

#

ゲートへ電圧を加えたときだけ、表面に電流の通り道が生まれる。

#

この通り道がチャネルである。

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8.MOSという名前は、三層構造をそのまま表している

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図解: 8.MOSという名前は、三層構造をそのまま表している
図解: 8.MOSという名前は、三層構造をそのまま表している

MOSは、次の三つの頭文字である。

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M:Metal 金属

#

O:Oxide 酸化膜

#

S:Semiconductor 半導体

#

初期の構造では、最上部のゲートに金属が使われ、その下に二酸化シリコン、さらに下にシリコン半導体が置かれた。

#

金属ゲート ══════════════

#

二酸化シリコン ██████████████

#
シリコン
──────────────
#

この三層だけを取り出すと、一種のコンデンサーになっている。

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金属ゲートと半導体は、酸化膜によって直接の電気接続を遮断されている。しかし両者の間には電界が生じる。

#

MOSトランジスタを理解するには、まずこのMOSコンデンサーを理解する必要がある。

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9.酸化膜は、電流を遮断しながら電界を伝える

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図解: 9.酸化膜は、電流を遮断しながら電界を伝える
図解: 9.酸化膜は、電流を遮断しながら電界を伝える

金属ゲートとシリコンの間には酸化膜があるため、理想的には直流電流はほとんど流れない。

#

しかし、ゲートへ電圧を加えると、金属表面へ電荷がたまる。

#

その電荷が作る電界によって、酸化膜の反対側にあるシリコン表面のキャリア分布が変化する。

#

ゲートへ正電圧

#

+ + + + + ══════════════ 金属

#

██████████████ 酸化膜

#

− − − − − シリコン表面

#

酸化膜は電子を直接通さない。

#

それでも、電荷が作る力は酸化膜を越えて半導体へ作用する。

#

このためゲートは、シリコンへ接触しないまま、その表面状態を制御できる。

#

酸化膜は電流に対しては壁だが、電界に対しては門だった。

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10.正のゲート電圧は、正孔を追い払う

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図解: 10.正のゲート電圧は、正孔を追い払う
図解: 10.正のゲート電圧は、正孔を追い払う

p型シリコンを基板として使うnチャネルMOSFETを考える。

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p型シリコンでは、正孔が主なキャリアである。

#

ゲートへ正の電圧を加えると、同じ正電荷として扱われる正孔は、ゲート直下の表面から遠ざけられる。

#

正のゲート電圧 +++++ ══════════ 酸化膜 ██████████

#
正孔
○ ○ ○ ○
  ↓ ↓
表面から離れる
#

表面付近から正孔が減ると、移動可能なキャリアが少ない領域が生じる。

#

これを空乏層と呼ぶ。

#
ゲート
══════════
酸化膜
██████████
空乏層
──────────
p型基板
○ ○ ○ ○ ○
#

この段階では、まだソースとドレインを結ぶ強い電流経路はできていない。

#

ゲート電圧をさらに高くすると、次の変化が起きる。

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11.さらに電圧を上げると、表面がn型へ反転する

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図解: 11.さらに電圧を上げると、表面がn型へ反転する
図解: 11.さらに電圧を上げると、表面がn型へ反転する

正のゲート電圧を強くすると、正孔が追い払われるだけでなく、負の電荷を持つ電子が表面へ引き寄せられる。

#

もともとp型だったシリコン表面に、電子が正孔より多い薄い層が形成される。

#

正のゲート ++++++ ════════════ 酸化膜 ████████████

#
電子
− − − − − −
────────────
p型シリコン
#

表面だけを見ると、p型からn型へ変わったように振る舞う。

#

これを反転と呼び、その層を反転層またはnチャネルと呼ぶ。

#
n型ソース   n型チャネル   n型ドレイン
  ┌──┐  −−−−−−−−−  ┌──┐
──┘  └──────────────┘  └──
          p型基板
#

このチャネルが形成されると、ソースとドレインの間を電子が移動できるようになる。

#

酸化膜の下に、電圧によって開閉する道が現れたのである。

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12.ゲートは、チャネルを開く門である

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図解: 12.ゲートは、チャネルを開く門である
図解: 12.ゲートは、チャネルを開く門である

MOSFETの主要な端子は、次の三つである。

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ソース

#

キャリアがチャネルへ入る側。

#

ドレイン

#

キャリアがチャネルから出る側。

#

ゲート

#

チャネルを作るか消すかを、電界によって制御する端子。

#
ソース          ドレイン
  │                │
  ▼                ▼
n型領域          n型領域
   └────チャネル────┘
          ▲
          │
        ゲート
#

ゲート電圧が低いとき、ソースとドレインの間にチャネルはない。

#

ゲート OFF

#

ソース × ドレイン

#

ゲート電圧が十分高くなると、表面にチャネルができる。

#

ゲート ON

#

ソース======ドレイン チャネル

#

この意味で、gateという名前は単なる比喩ではない。

#

ゲート電極は、電流の通路を開閉する門そのものである。

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13.しきい値電圧――門が開き始める境界

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図解: 13.しきい値電圧――門が開き始める境界
図解: 13.しきい値電圧――門が開き始める境界

ゲートへわずかな電圧を加えただけでは、十分なチャネルは形成されない。

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表面の正孔を減らし、空乏層を作り、さらに十分な電子を引き寄せるには、ある程度以上のゲート電圧が必要になる。

#

この境界となる電圧をしきい値電圧と呼ぶ。

#
ゲート電圧が低い
        ↓
チャネルなし
        ↓
OFF
#
ゲート電圧がしきい値を超える
        ↓
反転層が形成
        ↓
ON
#

実際のトランジスタでは、電流が完全にゼロから突然最大になるわけではない。

#

しきい値付近でも少量の電流が流れ、ゲート電圧を高くするほどチャネル内の電子が増え、電流を流しやすくなる。

#

しかし論理回路では、この連続的な変化を、

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低い電圧=0 高い電圧=1

#

として利用できる。

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MOSFETは、電界によって作られたアナログなチャネルを、デジタルなスイッチとして使用する装置でもある。

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14.ゲートへ電流を流し続けなくてよい

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図解: 14.ゲートへ電流を流し続けなくてよい
図解: 14.ゲートへ電流を流し続けなくてよい

バイポーラトランジスタでは、コレクタ電流を流すために、一般にベースへ電流を供給する必要がある。

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バイポーラ

#
ベース電流
     ↓
大きなコレクタ電流を制御
#

MOSFETでは、ゲートとシリコンの間が酸化膜で絶縁されている。

#

ゲート電圧を変える瞬間には、MOSコンデンサーを充電または放電するための電流が流れる。しかし、一定電圧を維持している間は、理想的にはゲートへ直流電流を流し続ける必要がない。

#

MOSFET

#
ゲートを充電
     ↓
電界を維持
     ↓
チャネルを制御
#

これにより、MOSFETは極めて高い入力抵抗を持つ。

#

一つのトランジスタだけなら小さな差に見える。しかし、数千、数百万、数十億のゲートを持つ回路では、制御端子へ電流を流し続けなくてよいことが、消費電力と集積度に大きな差を生む。

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15.MOSFETは、一種類のキャリアを使う

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図解: 15.MOSFETは、一種類のキャリアを使う
図解: 15.MOSFETは、一種類のキャリアを使う

バイポーラトランジスタでは、電子と正孔の両方が動作に関係する。

#

このため「バイポーラ」、すなわち二つの極性のキャリアを使うトランジスタと呼ばれる。

#

一方、nチャネルMOSFETのチャネル電流では主として電子が、pチャネルMOSFETでは主として正孔が使われる。

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このためMOSFETは、広い意味でユニポーラトランジスタに分類される。

#

バイポーラトランジスタ

#
電子+正孔
     ↓
キャリア注入で制御
#

MOSFET

#
主に一種類のキャリア
     ↓
電界でチャネル濃度を制御
#

MOSFETでは、ベース内部へ少数キャリアを注入し、それを蓄積・除去する必要がない。

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この性質は、後にスイッチング動作と高集積化を進めるうえで重要になる。

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16.MOS構造は、プレーナ工程と相性がよかった

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図解: 16.MOS構造は、プレーナ工程と相性がよかった
図解: 16.MOS構造は、プレーナ工程と相性がよかった

MOSFETは、基本的にウェハー表面側から作ることができる。

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p型シリコン基板
        ↓
ソース・ドレイン領域を形成
        ↓
表面へ薄い酸化膜を作る
        ↓
酸化膜上へゲートを形成
        ↓
接触窓と金属配線を形成
#

バイポーラトランジスタのように、エミッタ、ベース、コレクタという三層を深さ方向へ精密に重ねる必要がない。

#

ソースとドレインは、表面の左右に置ける。ゲートは、その間の上部に置く。

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上から見たMOSFET

#

ソース | ゲート | ドレイン

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この平面的な構造は、フォトリソグラフィによって繰り返し形成しやすい。

#

さらに、MOS論理ではトランジスタそのものを抵抗の代わりに使うことができ、回路を構成する部品の種類を減らせる。

#

そのため、初期には性能でバイポーラに劣っていても、MOSにはより多くのトランジスタを一枚へ詰め込める可能性があった。

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17.しかし、最初のMOSFETは速くなかった

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図解: 17.しかし、最初のMOSFETは速くなかった
図解: 17.しかし、最初のMOSFETは速くなかった

MOSFETが発表されても、半導体産業がすぐにバイポーラから切り替わったわけではない。

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初期のMOSには、多くの問題があった。

#

酸化膜中や界面に残る電荷

#

表面状態によるしきい値の変動

#

ゲート酸化膜の欠陥

#

汚染による漏れ電流

#

キャリア移動度の低下

#

製造ロットごとの特性差

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バイポーラより遅い動作速度

#

ベル研究所でも、MOSFETは直ちに通信装置へ必要とされる性能を持たないと見られ、積極的な製品開発へは進まなかった。アタラとカーンの装置は1960年に公表されたものの、当初は産業界から大きく注目されたわけではなかった。(CHM)

#

当時の評価は、次のようなものだった。

#

バイポーラ

#

速い 実績がある 増幅性能が高い

#

MOS

#

遅い 表面に敏感 製造条件が安定しない

#

MOSは、すぐに勝者となった技術ではない。

#

集積度と消費電力が本当に重要になる時代を待つ必要があった。

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18.最初に量産へ進んだのは、pチャネルMOSだった

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図解: 18.最初に量産へ進んだのは、pチャネルMOSだった
図解: 18.最初に量産へ進んだのは、pチャネルMOSだった

MOSFETには、主に二つの種類がある。

#

nチャネルMOS 電子がチャネルを流れる

#

pチャネルMOS 正孔がチャネルを流れる

#

初期のMOS集積回路では、pチャネルMOS、すなわちPMOSが先に実用化された。

#

当時の製造条件では、PMOSの方がしきい値や界面電荷の影響を扱いやすく、比較的安定して製造できたためである。

#

ただし、正孔の移動度は電子より低いため、一般にPMOSは同じ寸法のNMOSより電流を流しにくく、速度面で不利になる。

#

それでも、回路の速度より、

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素子数

#

小型化

#

低い消費電力

#

製造コスト

#

が重視される用途では、MOSの利点が大きかった。

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19.1964年、最初の商用MOS ICが登場した

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図解: 19.1964年、最初の商用MOS ICが登場した
図解: 19.1964年、最初の商用MOS ICが登場した

1964年、General Microelectronicsは、商用MOS集積回路を発表した。

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ロバート・ノーマンが設計した20ビットのシフトレジスターで、120個のpチャネルMOSトランジスタが一枚のチップへ集積されていた。これは、当時のバイポーラICより多くのトランジスタを載せられることを示した。(CHM)

#
入力データ
    ↓
MOSトランジスタ段
    ↓
次の段へ移動
    ↓
20段のシフトレジスター
#

MOSは、最初から高速コンピューターの演算回路を奪ったわけではない。

#

まず、シフトレジスター、計算機、記憶回路など、同じ構造を多数繰り返す回路で力を発揮した。

#

一つ一つのトランジスタが多少遅くても、より多くの機能を一枚へ統合できれば、装置全体は小さく、安く、信頼性の高いものになる。

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20.ワンラス――nMOSとpMOSを組み合わせる

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図解: 20.ワンラス――nMOSとpMOSを組み合わせる
図解: 20.ワンラス――nMOSとpMOSを組み合わせる

MOSFETには、ゲート電圧の極性が反対となるnチャネル型とpチャネル型がある。

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1963年、フェアチャイルドのフランク・ワンラスは、この二種類を相補的に組み合わせる回路を考案した。

#

これがCMOSである。

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C:Complementary 相補的

#

MOS: 金属・酸化膜・半導体

#

ワンラスは、pチャネルとnチャネルのMOSFETを一つの論理回路へ組み合わせることで、定常状態の消費電力を大幅に減らせることを示した。(CHM)

#

最も基本的なCMOSインバーターは、次のような構造になる。

#
電源
 │
pMOS
 │
 ├──出力
 │
nMOS
 │
接地
#

入力が低いときはpMOSがオン、nMOSがオフになる。

#

入力が高いときはpMOSがオフ、nMOSがオンになる。

#

入力0

#

pMOS:ON nMOS:OFF 出力:1

#

入力1

#

pMOS:OFF nMOS:ON 出力:0

#

どちらの安定状態でも、電源から接地まで両方のトランジスタが同時に導通し続けない。

#

理想的には、状態を保持しているだけなら大きな直流電流が流れない。

#

21.CMOSが解いたのは、集積回路の発熱だった

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図解: 21.CMOSが解いたのは、集積回路の発熱だった
図解: 21.CMOSが解いたのは、集積回路の発熱だった

PMOSだけ、またはNMOSだけで論理回路を作る場合、負荷として働く素子を通じて、定常的に電流が流れる構成が多かった。

#

トランジスタ数が増えるほど、この静的電流が積み重なり、消費電力と発熱が増える。

#

CMOSでは、一方のトランジスタがオンのとき、もう一方がオフになる。

#

pMOS nMOS

#

ON OFF または OFF ON

#

大きな電流が流れるのは、主に出力を0から1、または1から0へ切り替える瞬間である。

#

回路が状態を維持している間の消費電力を小さくできるため、より多くのトランジスタを同じチップへ載せられる。

#

ただし、1960年代初頭のCMOSは製造工程が複雑で、速度も十分ではなかった。そのため、ワンラスの発明が直ちに主流になったわけではない。CHMは、CMOSを最低電力の論理構成でありながら、初期には性能上の制限から受け入れが遅れた技術と位置づけている。(CHM)

#

CMOSの優位性が決定的になるのは、集積するトランジスタ数が増え、電力密度が回路設計の中心問題になってからである。

#

22.MOSは、トランジスタを抵抗としても使えた

#
図解: 22.MOSは、トランジスタを抵抗としても使えた
図解: 22.MOSは、トランジスタを抵抗としても使えた

初期のバイポーラICでは、トランジスタに加えて抵抗も必要だった。

#

抵抗は、シリコン中へ細長い拡散領域を作ることで形成できる。しかし、大きな抵抗値を得るには広い面積を必要とした。

#

MOS回路では、MOSFETを完全にオンにせず、電流を制限する素子として使うことができた。

#

バイポーラIC

#

トランジスタ + 拡散抵抗 + ダイオード

#

MOS IC

#

MOSFET + MOSFETを負荷として利用

#

これにより、回路のほとんどを同じ形のMOSトランジスタで構成できる。

#

製造工程を共通化しやすく、回路設計も繰り返しパターンへ変えやすい。

#

MOSが大規模集積回路へ適していた理由は、トランジスタ自体が小さいことだけではない。

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少数の基本構造を繰り返すだけで、論理回路と記憶回路を構成できた

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ことにある。

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23.酸化膜の厚さが、門の効き方を決めた

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図解: 23.酸化膜の厚さが、門の効き方を決めた
図解: 23.酸化膜の厚さが、門の効き方を決めた

ゲートが作る電界は、酸化膜を通してシリコン表面へ作用する。

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酸化膜が厚ければ、同じ表面電荷を引き寄せるために、より高いゲート電圧が必要になる。

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酸化膜を薄くすれば、小さな電圧でも強い電界を与えられる。

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厚い酸化膜

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ゲート ════════ ████████ ████████ シリコン

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電界が弱い 高い電圧が必要

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薄い酸化膜

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ゲート ════════ ████ シリコン

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電界が強い 低い電圧で動作

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ただし、薄くしすぎれば酸化膜を電子が通り抜ける漏れや、絶縁破壊が起きやすくなる。

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MOS技術の発展は、単にトランジスタを横方向へ小さくする歴史ではなかった。

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ゲート酸化膜を薄くする

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界面の欠陥を減らす

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汚染を除く

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しきい値電圧を制御する

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酸化膜の信頼性を維持する

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という、数nm以下の絶縁膜を扱う歴史でもあった。

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24.金属でなくなっても、MOSという名前は残った

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図解: 24.金属でなくなっても、MOSという名前は残った
図解: 24.金属でなくなっても、MOSという名前は残った

MOSという名称のMはMetal、すなわち金属である。

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初期のMOSFETでは、アルミニウムなどの金属がゲートとして使われた。

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しかし後には、ゲート材料として多結晶シリコンが使用されるようになった。さらに現代では、再び金属系ゲート材料が使われる場合もある。

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初期

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金属ゲート + 酸化膜 + シリコン

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後の世代

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多結晶シリコンゲート + 絶縁膜 + シリコン

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厳密には、ゲートが金属でない時代の構造をMOSと呼ぶことには名称上のずれがある。

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それでもMOS、MOSFET、CMOSという名前は、技術系統を表す言葉として残った。

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現在のMOSという言葉は、特定の三材料だけでなく、

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絶縁されたゲートの電界によって、半導体チャネルを制御するトランジスタ体系

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を意味するようになった。

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25.MOSは、回路と製造工程をさらに近づけた

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図解: 25.MOSは、回路と製造工程をさらに近づけた
図解: 25.MOSは、回路と製造工程をさらに近づけた

プレーナICでは、回路は複数のマスクの重なりとして設計されるようになった。

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MOSでは、この関係がさらに強くなる。

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ソース・ドレイン用マスク
+
ゲート用マスク
+
接触窓マスク
+
金属配線マスク
        ↓
MOS集積回路
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MOSFETの電気的な性能は、

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ゲートの長さ

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ゲートの幅

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酸化膜の厚さ

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ソース・ドレインとの重なり

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基板のドーピング濃度

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ゲートと配線の抵抗

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によって決まる。

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したがって回路設計者が描く図形は、単なる接続図ではない。

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図形の寸法そのものが、トランジスタの速度、電流、容量、消費電力を決める。

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回路の形が、そのまま物理特性になる。

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これは、点接触型や個別部品の回路にはなかった特徴だった。

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26.MOS構造は、記憶する門にもなった

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図解: 26.MOS構造は、記憶する門にもなった(1/2)
図解: 26.MOS構造は、記憶する門にもなった(1/2)
図解: 26.MOS構造は、記憶する門にもなった(2/2)
図解: 26.MOS構造は、記憶する門にもなった(2/2)

ゲートとシリコンの間に絶縁膜があるという構造は、電流の制御だけでなく、電荷の保存にも利用できる。

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1967年、ダウォン・カーンとサイモン・ジーは、絶縁膜に囲まれた浮遊ゲートへ電荷を保存し、その電荷によってMOSFETのしきい値を変えるメモリ構造を発表した。(Wiley Online Library)

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制御ゲート ════════════

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絶縁膜 ████████████

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浮遊ゲート ════════════ 電荷を保存

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絶縁膜 ████████████

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シリコンチャネル
────────────
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電源を切っても浮遊ゲートの電荷が残れば、トランジスタの状態を保持できる。

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この考え方は、後のEPROM、EEPROM、フラッシュメモリへつながっていく。

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酸化膜の門は、電流を開閉するだけでなく、情報を閉じ込める容器にもなった。

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第9章まとめ――酸化膜は、壁から門へ変わった

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プレーナ工程において、二酸化シリコン膜は、接合端を汚染から守る保護膜だった。

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ノイスは、その酸化膜を金属配線の下に置く絶縁板として利用した。

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アタラとカーンは、さらに別の役割を与えた。

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プレーナ工程

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酸化膜 =表面と接合を守る膜

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ノイスのIC

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酸化膜 =金属配線を載せる絶縁板

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MOSFET

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酸化膜 =ゲート電界を半導体へ伝える層

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MOSFETでは、ゲートと半導体は直接接触していない。

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酸化膜が電流を遮断しながら、電界によってシリコン表面のキャリアを動かす。

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正孔を追い払い、電子を引き寄せ、ソースとドレインの間に一時的なチャネルを作る。

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ゲート電圧なし

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ソース × ドレイン チャネルなし

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ゲート電圧あり

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ソース=====ドレイン チャネル形成

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リリエンフェルトが1920年代に考えた電界効果の構想は、表面状態によって長く実現を阻まれた。

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バーディーンは、その障害が半導体表面にあることを示した。

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アタラは、熱酸化膜によってシリコン表面を安定させた。

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カーンは、その界面を使って最初の動作するMOSFETを作った。

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ワンラスは、n型とp型のMOSFETを組み合わせ、低消費電力のCMOS回路を考案した。

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電界効果の構想
リリエンフェルト
        ↓
表面状態の理解
バーディーン
        ↓
熱酸化膜による表面安定化
アタラ
        ↓
MOSFETの実演
アタラ、カーン
        ↓
相補型MOS
ワンラス
        ↓
大規模集積回路
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最初のMOSFETは、当時のバイポーラトランジスタより遅く、表面状態や酸化膜中の電荷に敏感だった。

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それでもMOSには、バイポーラにはない性質があった。

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ゲートへ電流を流し続けなくてよい

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構造が平面的である

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同じ形の素子を繰り返し配置できる

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トランジスタを負荷や記憶素子として使える

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CMOS化によって静的消費電力を抑えられる

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微細化するほど多くの機能を一枚へ統合できる

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キルビーとノイスが作った初期ICは、部品と配線を一枚のシリコンへ統合した。

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MOS構造は、その一枚の中へ置ける門の数を増やした。

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バイポーラトランジスタは、電流で電流を制御した。MOSFETは、絶縁膜越しの電界で電流を制御した。

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酸化膜は、かつて半導体表面を覆うだけの膜だった。

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プレーナ工程では接合を守り、ノイスのICでは配線を支え、MOSFETではチャネルを開閉する門となった。

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この門を小さくし、短くし、何百万、何十億と並べていくことが、次の半導体史の中心となる。

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半導体の競争はここから、

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一枚のシリコンへ、いくつのトランジスタを作れるか

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だけではなく、

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一つのゲートを、どこまで短く、どこまで薄く、どこまで低い電圧で動かせるか

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を競う時代へ入っていく。

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