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第2部2章 真空管の時代――整流、増幅、通信

光・ネットワーク AI半導体

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第2部 真空から結晶へ

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第2章 真空管の時代――整流、増幅、通信

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鉱石検波器は、電池を使わずに電波から音声を取り出せる、驚くほど簡素な装置だった。

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アンテナが受けた高周波交流を、鉱石と金属針の接点が整流する。正負に高速で振動していた電流の向きをそろえることで、搬送波の振幅に隠れていた音声の形が現れる。

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しかし、鉱石検波器には決定的な弱点があった。

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それは、信号を大きくできないことである。

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遠くから届く電波は弱い。長い電話線を通った声も、抵抗や容量によって次第に小さくなる。鉱石検波器は情報を取り出せても、失われたエネルギーを補うことはできない。

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人類が次に必要としたのは、電流を一方向へ通す「弁」だけではなかった。

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小さな信号で、別の大きな電流を制御する装置――増幅器である。

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その役割を最初に担ったのが、真空管だった。

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1.なぜ「真空」で電子を扱ったのか

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十九世紀末から二十世紀初頭には、固体内部で電流が流れる仕組みは、まだ十分に理解されていなかった。

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電子が発見されたのは1897年であり、半導体のエネルギーバンドや正孔、p型・n型といった概念が整うのは、さらに後の時代である。

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一方、加熱した金属から負の電荷が放出される現象は、実験によって観察できた。

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金属を十分に加熱すると、一部の電子が表面から飛び出す。これを熱電子放出という。

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加熱された金属

電子 電子 電子
  ↓     ↓     ↓
━━━━ カソード ━━━━
   熱によって電子が放出される
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ただし、空気中では飛び出した電子が気体分子へ衝突し、思うように移動できない。

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そこで、ガラス容器の中から空気を抜き、電子が移動しやすい空間を作る。

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ガラス容器

カソード      アノード
  ● - - - - - → ▌
       真空中を移動
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真空管とは、真空または低圧の気体を封じた容器の中で、電子の流れを電極によって制御する装置である。

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半導体が「結晶内部の電子」を操る技術だとすれば、真空管はその前に登場した、空間を飛ぶ電子を操る技術だった。真空管は、真空中を電極間で移動する電子を利用し、整流、増幅、発振、スイッチングなどを行う。(ETHW)

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2.熱電子放出とエジソン効果

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白熱電球では、細いフィラメントへ電流を流して高温にし、その熱によって光を出す。

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1880年代、白熱電球の研究中だったトーマス・エジソンは、電球の内部へもう一枚の金属板を入れると、特定の電圧方向でフィラメントから金属板へ電流が流れることを観察した。

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現在の言葉で説明すると、加熱されたフィラメントから電子が放出され、正に帯電した金属板へ引き寄せられていた。

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正の金属板
      +
      ▌
  ↑ 電子が引き寄せられる
 - - - -
━━━━━━━
加熱フィラメント
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この現象は後にエジソン効果と呼ばれた。

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しかしエジソンは、これを電子回路の基本素子へ発展させなかった。電球内部の変化を測定する用途などは考案したものの、無線信号を整流する装置として体系化したのは、イギリスの電気技術者ジョン・アンブローズ・フレミングだった。フレミングは1880年代からエジソン効果を研究し、1904年に高周波信号を整流する真空管を作った。(ETHW)

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3.1904年、フレミングの二極真空管

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フレミングが作った装置には、二つの主要な電極があった。

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  • 電子を放出するカソード
  • 電子を受け取るアノード
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電極が二つあるため、二極真空管または真空管ダイオードと呼ばれる。

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初期の装置では、加熱するフィラメント自体がカソードとして働いた。

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       ガラス管内部

カソード      アノード
加熱される     金属板
  ━━━   電子 → → ▌
    -                 +
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アノードをカソードより正にすると、熱電子がアノードへ引き寄せられ、管内に電流が流れる。

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反対に、アノードを負にすると、電子は反発される。

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順方向

カソード -    + アノード
電子 → → → → → → →
電流が流れる


逆方向

カソード -    - アノード
電子 ← 反発
ほとんど流れない
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電子が移動する方向はカソードからアノードだが、慣用電流の向きはその反対である。

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重要なのは、電圧の方向を逆にしたとき、同じようには電流が流れないことだ。

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鉱石と金属針の接点が持っていた「一方向には流れやすく、逆には流れにくい」という性質を、真空中の熱電子によって再現したのである。

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フレミングはこの装置を、水や気体の流れを一方向だけに通す弁になぞらえ、バルブと呼んだ。1904年11月に特許を出願したこの装置は、高周波振動を整流し、無線信号を検出するために使われた。(ETHW)

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4.真空管による整流

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アンテナから入る高周波信号は、正負に高速で変化する交流である。

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入力交流

     /\       /\
────/──\────/──\────
  /        \/
#

二極真空管は、アノードが正になる半周期には電流を通し、負になる半周期には電流を遮断する。

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二極管通過後

     /\               /\
────/──\───────────/──\──
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これは半波整流であり、出力は一方向へ脈打つ脈動直流となる。

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初期の無線電信では、高周波振動をそのまま機械式の計器へ入れても、変化が速すぎて針が反応できなかった。二極真空管で一方向へ整流すれば、信号の存在や強弱を計器や受話器で捉えやすくなる。フレミングはこの原理によって、弱い無線信号の検出を可能にした。(ETHW)

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AM信号の場合も、鉱石検波器と同様に、整流後の波形から包絡線を取り出せば音声を復元できる。

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したがって、フレミング管が最初に果たした役割は、鉱石検波器とよく似ていた。

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高周波を一方向へそろえ、情報を取り出せる形へ変える。
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ただし真空管は、天然鉱石の不均一な感度点を探す必要がなく、製造条件を整えれば比較的再現性のある検波器を作れる可能性を持っていた。

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5.整流だけでは通信距離を延ばせない

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フレミングの二極管は、信号を検出できた。

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しかし、電極が二つだけでは、入力信号を使って別の大きな電流を細かく制御できない。

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二極管の働きは、基本的には次の二状態である。

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アノードが正 → 電流を通す
アノードが負 → 電流を遮断する
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これは整流には適している。

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だが、遠距離通信で本当に必要だったのは、弱くなった信号を元の形を保ったまま大きくすることだった。

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長い電話線を進む音声信号は、導線の抵抗、周囲との容量、コイル成分などによって次第に弱くなり、波形も崩れる。

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途中へコイルを入れることで減衰や歪みをある程度抑えることはできるが、コイルは新しいエネルギーを信号へ与えられない。

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入力音声

大きい波
~~~~~~~~
      ↓ 長い電話線
小さい波
~~~
      ↓ さらに伝送
聞き取れなくなる
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必要だったのは、途中で小さくなった波形を読み取り、外部電源のエネルギーを使って、同じ形の大きな信号として送り直す中継増幅器だった。長距離電話では、線路損失を抑える装荷コイルに加え、失われた信号強度を回復させる電子増幅が必要だった。(ETHW)

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6.1906年、ド・フォレストの三極管

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アメリカの発明家リー・ド・フォレストは、フレミング管にもう一つの電極を加えた。

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カソードとアノードの間に置かれた、細い金属線の網である。

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これをグリッドと呼ぶ。

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カソード    グリッド   アノード
  ━━━    |||||    ▌
電子 → → → → ||||| → → → ▌
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カソード、グリッド、アノードの三つの電極を持つため、三極真空管またはトライオードと呼ばれる。

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ド・フォレストは一連の装置を「音」を意味する言葉からオーディオンと名付けた。1906年にオーディオンの研究を発表し、同年末ごろにはグリッドを管内のカソードとプレートの間へ置く構成へ到達した。グリッドを備えた三極管の特許は1907年に出願され、1908年に成立している。したがって「1906年の三極管」とは、完成した工業製品が一日で生まれたというより、1906年から1908年にかけて成立した発明過程を圧縮した表現である。(Wikipedia)

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7.グリッドは電子の門である

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グリッドへ電圧を加えると、カソードからアノードへ向かう電子の量を変えられる。

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グリッドがカソードに対して負になると、負の電子を反発する。

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グリッドが強く負

カソード   グリッド    アノード
  ━━━   -||||-    ▌
電子 → → ×× 反発
プレート電流は小さい
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グリッドの負電圧を弱めると、より多くの電子が通過できる。

#
グリッドの負電圧が弱い

カソード   グリッド    アノード
  ━━━    ||||     ▌
電子 → → → → → → → → → → → →
プレート電流は大きい
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グリッドを十分に負にすれば、電子の流れをほぼ止められる。

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反対に、グリッド電圧を少し上げると、プレート電流は大きく増える。

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プレート電流とは、真空管の中で電子が飛び出す「カソード(陰極)」から、電子を受け取る「プレート(陽極)」に向かって流れる直流電流の事である。

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つまり三極管は、

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小さなグリッド電圧の変化で、大きなプレート電流を制御する装置
#

である。グリッドが正側へ動けば電子の流れを助け、負側へ動けば電子を反発して流れを抑える。(ETHW)

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8.なぜ小さな信号が増幅されるのか

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三極管が信号そのものから新しいエネルギーを作り出しているわけではない。

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増幅に使われるエネルギーは、アノード側へ接続した直流電源から供給される。

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小さな入力信号
マイクやアンテナ
        ↓
      グリッド
        ↓
プレート電流を制御
        ↓
直流電源の大きなエネルギーを
信号の形に合わせて変化させる
        ↓
大きな出力信号
#

たとえば、グリッドへ小さな音声電圧を加える。

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音声電圧が上がればプレート電流が増え、下がればプレート電流が減る。

#
入力

  /\
/    \__


プレート電流

     /\
   /    \
規模だけ大きい
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プレート回路へ抵抗を入れると、電流変化が抵抗両端の電圧変化へ変換される。

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小信号の範囲では、概念的に次のように表せる。

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ΔIp≈gmΔVg{\Delta I_{\mathrm{p}}\approx g_{\mathrm{m}}\Delta V_{\mathrm{g}}}
#

ΔVg{\Delta V_{\mathrm{g}}}
:グリッド電圧の変化

ΔIp{\Delta I_{\mathrm{p}}}
:プレート電流の変化

#

gm{g_{\mathrm{m}}}
:相互コンダクタンス

#

負荷抵抗については、

#

負荷抵抗を

RL{R_{\mathrm{L}}}
とすると、出力電圧の変化はおおむね、

#
ΔVout≈−RLΔIp{\Delta V_{\mathrm{out}}\approx-R_{\mathrm{L}}\Delta I_{\mathrm{p}}}
#
ΔVout≈−RLgmΔVg{\Delta V_{\mathrm{out}}\approx-R_{\mathrm{L}}g_{\mathrm{m}}\Delta V_{\mathrm{g}}}
#

となる。

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マイナス符号は、プレート電流が増えると抵抗での電圧降下が増え、プレート側の出力電圧が下がるためである。一般的な三極管の増幅回路では、入力と出力の波形が上下反転する。

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重要なのは、増幅器が次のように働く点である。

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入力信号はエネルギー源ではなく、電源から出力へ流すエネルギーを調節する指令である。
#

これは後のバイポーラトランジスタやMOSFETにも受け継がれる、電子増幅の基本原理である。

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9.検波器から増幅器へ――搬送波から音声を取り出し、再び大きくする

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高周波増幅

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鉱石検波器や二極真空管は、アンテナが受け取った高周波から、声や音楽の情報を取り出すことができた。しかし、ここでいう「音声を取り出す」とは、電波そのものを音へ変えることではない。送信側では、マイクが声を低周波の電圧変化へ変換し、その信号を使って高周波の搬送波を変化させている。

#

AM放送では、音声信号に合わせて搬送波の振幅を大きくしたり小さくしたりする。声が大きい瞬間には電波の振幅も大きくなり、声が小さい瞬間には振幅も小さくなる。細かな高周波の波を外側から包む輪郭、すなわち包絡線に、元の音声波形が写し取られているのである。FMでは振幅ではなく、搬送波の周波数を音声に合わせて少し高くしたり低くしたりするが、初期の鉱石検波器や二極管が得意としたのは、整流によって包絡線を取り出せるAM方式だった。

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検波

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受信側では、アンテナが電磁波を高周波交流へ変え、同調回路が目的の放送局を選ぶ。検波器はその交流を一方向へ整流し、高周波の正負が平均化されて音声情報を失うことを防ぐ。整流後には、振幅の大きさに従って脈打つ電流が残る。さらにイヤホンや抵抗、コンデンサーが細かな高周波成分を取り除くと、搬送波の外形だけが残り、マイクへ入った声と同じような低周波電圧が再現される。これが検波、あるいは復調である。

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しかし、検波によって情報を取り出しても、信号のエネルギーは増えない。鉱石ラジオでは、送信所から届いたわずかな電力だけでイヤホンを動かすため、音は非常に小さい。遠い局の信号や、長い通信線を通って減衰した音声を十分な大きさへ戻すことはできなかった。

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三極真空管

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そこで三極真空管が加わる。検波された小さな音声電圧をグリッドへ与えると、その変化に合わせて、直流電源からプレート(カソード)へ流れる大きな電流が増減する。入力された音声は電力源ではなく、電源のエネルギーをどのような波形で出力するかを決める指令として働く。こうして微弱な音声信号を、同じ形を保ったままスピーカーを動かせる大きな信号へ変えられるようになった。

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ラジオ受信機はこの段階で、単なる検波装置から、

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アンテナ
  ↓
同調
  ↓
高周波増幅
  ↓
検波・復調
  ↓
音声増幅
  ↓
スピーカー
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という信号処理システムへ変わった。検波器が電波の中から情報を見つけ、増幅器が外部電源のエネルギーを使って、その情報を人間が聞ける大きさへ育てたのである。

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1920年代の高真空三極管には、ラジオ受信機の音声出力段として使われ、放送音楽をスピーカーで聞けるようにしたものがある。スミソニアン所蔵資料でも、初期の高真空三極管が音声増幅やスピーカー受信の普及に寄与したことが確認できる。(americanhistory.si.edu)

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鉱石ラジオが「送信所から届いたわずかなエネルギーを分けてもらう装置」だったのに対し、真空管ラジオは電源からエネルギーを受け取り、届いた電波を何段にもわたって大きくできた。

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これによってラジオは、実験家がイヤホンで聞く装置から、家庭で家族がスピーカーを囲む大衆メディアへ変わっていく。

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10.増幅と発振は表裏一体だった

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帰還フィードバック

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三極真空管は、グリッドへ加えた小さな信号によって、直流電源からプレートへ流れる大きな電流を制御する。入力信号の形を保ったまま出力を大きくするのが増幅である。しかし、その出力の一部を再び入力側へ戻すと、回路の性質は大きく変わる。この戻し方を帰還、フィードバックという。

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発振

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出力信号が入力を弱める向きで戻れば負帰還となり、増幅率は下がる代わりに、歪みやばらつきを抑えられる。一方、入力をさらに強める向きで戻れば正帰還となる。最初は真空管内部の雑音や、電源投入時に生じるわずかな電圧変化しかなくても、それが増幅され、出力の一部が同じ位相で入力へ戻り、再び増幅される。この循環が続くと、外部から連続した入力を与えなくても、回路自身が周期的な信号を作り続ける。これが発振である。

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ただし、戻っているのは出力を維持するための全エネルギーではない。帰還信号は小さな電気エネルギーを持つが、より重要なのは、周波数、位相、タイミングを回路へ伝えることにある。大きな出力を生む主なエネルギーは直流電源から供給される。帰還信号は、真空管のグリッドを通じて、電源のエネルギーをいつ、どの向きでプレート回路へ加えるかを指示する。振り子を、動きと同じタイミングで毎回少しずつ押し、摩擦で失われたエネルギーを補う仕組みに近い。

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共振回路

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発振周波数は、コイルとコンデンサーからなる共振回路などによって選ばれる。ループを一周した信号が元の波と同じ位相で戻り、損失を補えるだけの大きさを保つと、一定周波数の振動が持続する。帰還が弱すぎれば振動は減衰し、強すぎれば波形が歪んだり、不要な周波数で発振したりするため、帰還量の調整も必要だった。

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火花放電式送信機が作る電波は、短い減衰振動の束であり、周波数も広く拡散しやすかった。これに対して真空管発振器は、直流電源から失われたエネルギーを毎周期補給し、一定周波数の連続波を作ることができた。この安定した高周波が、音声や情報を載せる搬送波となる。発振器そのものが声を繰り返しているのではない。まず情報を持たない規則正しい搬送波を作り、その振幅や周波数を別の音声信号で変化させることで、ラジオ放送が成立する。

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つまり増幅と発振の違いは、増幅した出力を入力へ戻すかどうかにある。三極管は、外から入った信号を大きくする増幅器であると同時に、自ら高周波を生み続ける発振器にもなったのである。

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10.5 通信の問題が、真空管と半導体を同じ研究所へ集めた

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第1章と第2章を続けて見ると、鉱石やセレンの奇妙な性質を調べる物性研究と、電話・無線を遠くまで届ける通信技術が、しだいに一つの流れへ合流していったことが分かる。その中心にあったのが、ベル系の通信事業と、のちのAT&T、ウェスタン・エレクトリック、ベル研究所である。ただし、これは最初から「半導体を発明しよう」と計画された一直線の歴史ではない。通信網が突きつける現実的な問題を解こうとするなかで、音、光、真空、結晶、材料科学の知見が同じ場所へ集められていったのである。

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その出発点となったのが、アレクサンダー・グラハム・ベルによる電話の実用化である。ベルは1876年、声で振動する薄い膜と電磁石を組み合わせ、空気の振動を連続的な電流変化へ変換し、導線の先で再び膜を振動させて音を再現した。電信が符号の断続を送っていたのに対し、電話は声の波形そのものを電気信号として運んだ。この「音を別の物理量へ写し取り、遠方で復元する」という発想が、後のフォトフォンへつながっていく。

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電話の基本は、声という空気振動を電気信号へ変え、線路を通して運び、再び音へ戻すことにある。ベルとチャールズ・サムナー・テインターが1880年に実験したフォトフォンは、この考え方をさらに進めた。送信側で声に合わせて光の強さを変化させ、受信側では光によって電気抵抗が変わるセレンを使い、その変化を電話受話器から音として取り出した。つまり、音声を別の搬送媒体へ載せ、感光材料で検出し、再び電気と音へ戻すという、後の無線や光通信にも通じる信号変換の連鎖が、すでに示されていた。ベル自身も、セレンの抵抗が光で変化する性質を利用し、光の変化を電話で音として聞けたと記録している。(Library of Congress)

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フォトフォンがそのままトランジスタへ発展したわけではない。しかし、ここには重要な発想が含まれていた。通信とは、一本の線を流れる電流だけを扱う仕事ではない。音を電気へ、電気を光や電波へ、さらに材料内部の抵抗変化を電気信号へ変える、複数の物理現象をつなぐシステムである。鉱石検波器も同様に、金属と結晶の接点が持つ非対称な伝導を使い、高周波から情報を取り出した。光に反応するセレンと、電流方向を選ぶ鉱石は、固体材料が通信信号を検出・変換できることを別々の形で示していた。

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一方、AT&Tが直面していた最大の問題は距離だった。電話線を長くすると、抵抗や容量によって音声信号は減衰し、周波数ごとに形も崩れる。整流器で信号を検出できても、失われたエネルギーは戻らない。そこで必要になったのが、弱くなった波形を読み取り、外部電源のエネルギーを使って同じ形の大きな信号へ作り直す中継増幅器だった。ウェスタン・エレクトリックが開発した高真空管式リピーターは1913年にニューヨーク―フィラデルフィア間で実用化され、真空管増幅器を利用した大陸横断電話網は1915年に開通した。(ETHW)

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この経験によって、ベル系の技術者たちは増幅器を単体の発明ではなく、巨大な通信網を構成する部品として評価するようになった。重要なのは、最高の増幅率だけではない。雑音が少ないこと、広い周波数帯を歪ませないこと、何千台も同じ特性で製造できること、長期間壊れず、交換や保守が容易であることが求められた。真空管は長距離電話を成立させたが、加熱電力、発熱、寿命、大きさ、故障率という問題を抱えていた。通信網が拡大するほど、「真空管と同じ増幅を、より小さく、冷たく、長寿命な固体で実現できないか」という要求が強くなった。

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1925年、AT&Tとウェスタン・エレクトリックの研究部門を母体としてベル電話研究所が設立された。そこでは電話機や交換機の改良だけでなく、音響、真空管、無線、光学、数学、量子物理、結晶、表面、材料精製が、同じ「通信」という目的の下で研究された。ベル研究所は異なる専門家を一か所へ集め、基礎科学と製品開発を連続した工程として扱う研究体制を築いた。(Nokia Corporation | Nokia)

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その環境では、鉱石検波器で得られた半導体接点の知識、フォトフォン以来の感光材料の知識、真空管で確立された増幅と帰還の回路理論、電話網が要求する信頼性と量産性が、互いに孤立せず結び付いた。1939年にはショックレーが真空管を置き換える固体増幅器の構想を再び追究し、戦時中にはレーダー用結晶検波器を通じて、ゲルマニウムやシリコンの精製、接合、表面状態への理解が深まった。こうした蓄積の先で、1947年にバーディーンとブラッテンが固体による増幅を実現し、ショックレーが接合型トランジスタの理論へ進んだ。ベル研究所自身も、トランジスタは電話網の真空管を置き換えるために生まれたと位置づけている。(Nokia Corporation | Nokia)

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したがって、電話、フォトフォン、無線、鉱石検波器、真空管、トランジスタは、別々の発明の列ではない。電話網が「弱い信号を遠くへ、正確に、繰り返し、安定して運ぶ」という問題を与え、真空管が増幅という解答を示し、光電材料と半導体結晶が、固体にも検出と制御の可能性があることを示した。

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通信技術と半導体物理が偶然に融合したというより、巨大な通信システムを完成させようとした結果、両者を分けて考えられなくなったのである。

#

#

11.電話線の途中に置かれた電子の中継所

#

電話の声は、マイクロフォンによって電流の変化へ変換される。

#

マイクロフォンは周囲の音波(空気の振動)を捉え、それを電気信号に変換する音響入力装置の事だ。

#

しかし長い銅線を進むうちに、信号は減衰する。

#
話者
 ↓
マイク
 ↓
大きな音声信号
~~~~~~
 ↓ 長距離線
小さな音声信号
~~
#

三極管を使った中継器は、この弱くなった信号をグリッドへ入力し、外部電源を使って大きな信号へ作り直す。

#
弱い信号
   ↓
三極管中継器
   ↓
大きな信号
   ↓
次の電話線区間
#

このような装置をリピーターと呼ぶ。

#

#
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初期のド・フォレストのオーディオンは、内部に残った気体の影響が大きく、動作が不安定だった。ド・フォレスト自身は、気体のイオンが動作に必要だと考えていた。

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AT&T傘下のウェスタン・エレクトリックで研究したハロルド・アーノルドらは、逆に管内の気体をできるだけ取り除き、高い真空を作ることで、安定した増幅器になることを明らかにした。

#

1913年10月には、ニューヨークとフィラデルフィア間の回線で、高真空三極管を用いた電話中継器が商用運用された。続いて中継器を組み込んだ大陸横断電話網が整備され、1915年にはニューヨークとサンフランシスコを結ぶ商用通話が実現した。(ETHW)

#

この変化は大きかった。

#

線を太くするだけでも、コイルを置くだけでも越えられなかった距離を、増幅器は何度も信号を作り直すことで越えた。

#
長距離通信は、一本の強い信号を最後まで運ぶ方式から、途中で何度も再生する方式へ変わった。
#

現在の光通信やデジタル通信でも、中継地点で信号を増幅・再生する考え方は受け継がれている。

#

#
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#

12.無線電信からラジオ放送へ

#

真空管以前の無線通信は、主にモールス符号を送る無線電信だった。

#

送信機をONとOFFにし、点と線の組み合わせで文字を送る。

#
短く送信 ・
長く送信 -

・- = A
-・・・= B
#

この方式では、声を忠実に送る必要はない。

#

しかし音声や音楽を送るには、空気の振動を連続的な電気信号へ変え、その細かな形を保ったまま送信・受信しなければならない。

#

三極管は、

#
  • マイクからの音声を増幅する
  • 搬送波を発振する
  • 音声を搬送波へ載せる
  • 送信電力を増幅する
  • 受信した高周波を増幅する
  • 音声をスピーカー用に増幅する
#

という、通信システムの各段階を担えた。

#

無線通信に真空管増幅と発振が導入されたことで、送受信の感度、選択度、周波数安定性が向上した。第一次世界大戦は無線装置の実用性を示し、その後の1920年代には放送局と家庭用受信機が急速に普及した。(ETHW)

#

ここで「ラジオ」は、一対一の通信手段から、一つの送信所が不特定多数へ同じ情報を送る放送へ変わる。

#
一つの送信所
      ↓
電磁波
↙   ↓   ↘
家庭 家庭 家庭
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真空管は、電話の距離を延ばしただけではない。

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同じ声や音楽を、同時に何万人、何百万人へ届ける社会を作った。

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12.5 LC発振器――電波の周期が機械の時間になった

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ラジオ放送を成立させるには、音声を載せるための規則正しい搬送波を作らなければならない。初期の火花式送信機が生み出した電波は、一度強く振動したあと急速に弱くなる減衰波だった。これに対して三極真空管の出力の一部を入力へ正しい位相で戻すと、回路で失われるエネルギーを直流電源から毎周期補い、一定の振動を持続できる。1912~1913年ごろには、この正帰還を利用して真空管を発振器として働かせる技術が確立され、連続した搬送波を送信機で作れるようになった。(ETHW)

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  • 1853年:ウィリアム・トムソン、後のケルヴィン卿が、コンデンサーをコイルを通して放電すると電流が往復振動することを理論的に示す。
  • 1857年ごろ:ベレント・フェデルセンが、火花放電が単発ではなく減衰振動になっていることを実験的に観察した。
  • 1887~1888年:ハインリヒ・ヘルツが、火花ギャップを備えたLC共振器で電磁波を発生・検出した。
  • 1889年ごろ:オリバー・ロッジが、二つの共振回路を同じ周波数に合わせる「共鳴」の実験を行った。
  • 1897年出願、1898年成立:ロッジの「シントニック・チューニング」特許により、送信機と受信機を共振させて特定の局を選ぶ考え方が無線通信へ導入された。
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その振動の速さを決めるのが、コイルを表すLとコンデンサーを表すCからなるLC共振回路である。コンデンサーに蓄えられた電気エネルギーがコイルの磁気エネルギーへ移り、次にはコイルからコンデンサーへ戻る。この往復によって電圧と電流が周期的に変化する。ただし、抵抗などによる損失があるため、LC回路だけでは振動はやがて消える。そこで真空管が振動を増幅し、正帰還によって失われた分を補給する。LC回路が振動の速さを選び、真空管が振動を維持することで、安定した高周波を作るLC発振器となった。こうした連続波は、音声や音楽を載せるラジオ放送だけでなく、受信機の同調や周波数変換にも利用された。(ETHW)

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発振器が生み出す「一定間隔で繰り返される変化」は、通信以外にも使える。正弦波を増幅・整形して、電圧の高い状態と低い状態が交互に現れるパルスへ変えれば、電子回路へ動作の時刻を知らせるクロックになる。クロックの一周期を一つの合図とすれば、「今は入力を読む」「次に値を記憶する」「その次に計算する」というように、多数の回路を同じ順序で動かせる。

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水晶振動子

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出発点は、1880年にジャック・キュリーとピエール・キュリーが発見した圧電効果でした。水晶へ圧力を加えると電荷が現れ、逆に交流電圧を加えると水晶が機械的に伸縮する。

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しかし、1880年の時点では、水晶をラジオの周波数基準として使っていたわけではありません。

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第一次世界大戦期には、ポール・ランジュバンらが水晶の圧電振動を水中超音波やソナーへ応用しました。その研究を経て、ウォルター・G・ケイディが1921年に、水晶共振子で発振周波数を制御する回路を開発しました。IEEEは1921~1923年を圧電水晶発振器成立の時期として認定する。

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さらに1923年ごろ、ジョージ・ワシントン・ピアースが、真空管のグリッドとプレート間などへ水晶を組み込む、より扱いやすい水晶発振回路を開発しました。これが後のピアース発振回路へつながる。

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1920年代には、水晶の機械的共振を真空管発振回路へ組み込み、LC回路よりも変動の少ない周波数を作る技術も発達した。水晶振動子はそれ自体がエネルギーを生むのではなく、発振周波数を鋭く選ぶ共振器である。真空管、直流電源、帰還回路と組み合わされて初めて、安定した水晶発振器になる。(IEEE Technology Navigator)

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こうして、無線の搬送波を作るために発達した発振技術は、やがて電子回路全体へ時間の基準を与える技術へ変わった。次に必要となるのは、そのクロックに合わせて電流を通したり止めたりする素子である。真空管は増幅器や発振器であるだけでなく、二つの状態を切り替える電子スイッチとしても使われ、計数、記憶、計算の回路へ進んでいく。

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13.真空管はスイッチにもなった

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グリッド電圧を連続的に変化させれば、三極管は増幅器になる。

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一方、グリッド電圧を二つの状態だけで使えば、真空管はスイッチになる。

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グリッドが十分に負
電子を遮断
出力 OFF


グリッド電圧を上げる
電子が流れる
出力 ON
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このONとOFFを、

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OFF = 0
ON  = 1
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と割り当てれば、論理回路を作れる。

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複数の真空管を組み合わせることで、

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  • AND
  • OR
  • NOT
  • フリップフロップ
  • カウンター
  • 加算器
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などを構成できる。

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AND、OR、NOTから記憶と計算へ

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真空管やトランジスタを、電流が流れる状態を「1」、流れない状態を「0」として使うと、二進数による論理回路を作ることができる。その最も基本的な回路が、AND、OR、NOTである。

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AND回路は、複数の入力がすべて1のときだけ、出力を1にする。「条件Aと条件Bの両方が成立した場合」という判断を表す。たとえば安全装置では、「扉が閉じている」と「始動ボタンが押されている」の両方が1になったときだけ機械を動かせる。

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OR回路は、入力のうち一つ以上が1なら、出力を1にする。「条件Aまたは条件Bが成立した場合」に対応する。複数の警報センサーのどれか一つが反応すれば、警報を作動させる回路などに使える。

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NOT回路は、入力を反転する。入力が1なら出力は0、入力が0なら出力は1になる。否定や反対の状態を作るため、インバーターとも呼ばれる。AND、OR、NOTを組み合わせれば、複雑な判断を行う論理回路を構成できる。

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しかし、これらの回路だけでは、現在の入力に応じて出力を決めるだけで、過去の状態を覚えられない。そこで使われるのがフリップフロップである。フリップフロップは、二つの増幅回路を互いに帰還させ、0または1のどちらかの状態を安定して保持する。新しい信号によって状態を切り替えるまで、電源が供給されている限り同じ値を保つため、1ビットの記憶素子となる。

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複数のフリップフロップを並べると、複数ビットを保持するレジスタができる。たとえば8個を並べれば、8ビットの数値や命令を一時的に保存できる。

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フリップフロップへ一定間隔のクロック信号を入力し、前段の状態変化を次段へ伝えると、カウンターになる。クロックが一回入るたびに、0000、0001、0010、0011というように二進数が進む。これは時間の計測、命令位置の管理、周波数の分周などに使われる。

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時間の計測、命令位置の管理、周波数の分周

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カウンターは、一定間隔で届くクロック信号を一つずつ数える回路である。発振器の周期が正確なら、クロックを何回受け取ったかによって経過時間を測定できる。たとえば1秒間に1000回のクロックを1000回数えれば、1秒が経過したと判断できる。時計、タイマー、通信の時間管理は、この仕組みを基礎としている。

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コンピューターでは、次に実行する命令がメモリのどこにあるかを、プログラムカウンターというレジスタで管理する。命令を一つ実行するたびに値を増やし、次の命令の番地へ進む。分岐命令では、条件に応じて別の番地へ値を書き換えるため、繰り返しや条件判断が可能になる。

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また、フリップフロップは入力クロックの周波数を半分にできる。前段の出力を次段へつなぐと、周波数は (1/2)、(1/4)、(1/8) と順に低くなる。これを分周という。高速な基準クロックから、回路ごとに必要な遅い周期を作ったり、一定時間を数えたりするために利用される。時間、命令の順序、動作速度は、いずれもクロックとカウンターによって統一的に管理されている。

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真空管発振器――規則正しいクロックを作る

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真空管をスイッチとして動かすには、回路全体へ動作の基準となる周期信号を配る必要がある。この信号がクロックであり、それを連続的に作る装置が発振器である。真空管発振器では、三極管で増幅した出力の一部を、入力側へ同じ位相で戻す正帰還を利用する。回路内部の微小な雑音が増幅され、帰還と再増幅を繰り返すことで、外部から信号を与え続けなくても周期的な電圧が発生する。

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ただし、発振周波数を真空管だけで正確に決めることはできない。コイルとコンデンサーからなるLC共振回路や、水晶振動子などを組み合わせて、特定の周波数だけを選ぶ。水晶振動子は周波数を決める受動的な共振器であり、単体では振動を持続できない。真空管と電源、帰還回路を加えて初めて、水晶発振器として連続信号を出力できる。

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こうして作られたクロックをフリップフロップやカウンターへ入力すると、回路を一定の順序で切り替えられる。真空管発振器は、無線の搬送波を作るだけでなく、初期計算機の時間管理、命令の進行、計数動作を統一する「電子の時計」としても働いた。

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加算器は、論理ゲートを組み合わせて二進数を足す回路である。1ビット同士を足す半加算器は、和と桁上がりを出力する。さらに前の桁から来る桁上がりも入力できる全加算器を横に並べれば、複数ビットの数を計算できる。

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このように、AND、OR、NOTが判断を作り、フリップフロップが状態を記憶し、カウンターが順序を数え、加算器が数値を処理する。真空管をONとOFFのスイッチとして使う発想から、コンピューターの論理、記憶、制御、計算という基本機能が形作られた。

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1940年代から1950年代の初期電子計算機では、数千本から数万本の真空管が論理素子として使われた。二つの三極管を一つのガラス管へ収めた双三極管一個で、1ビットを保持するフリップフロップを構成することもできた。(CHM)

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つまり真空管は、

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ダイオード
整流する

三極管
増幅する
発振する
スイッチする
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という電子工学の基本機能を一通り実現した。

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後のトランジスタが担う役割の多くは、すでに真空管によって発見されていたのである。

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14.巨大なガラスの灯が抱えた限界

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真空管は電子の時代を開いたが、理想的な部品ではなかった。

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加熱が必要

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電子を放出するには、カソードやフィラメントを高温にしなければならない。

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そのため、信号を処理していないときにも、ヒーターが電力を消費する。

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電力
 ├─ 信号増幅に使う
 └─ カソードを加熱するためにも使う
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大量の真空管を使う装置では、ヒーター電力と発熱が大きな問題になる。

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大きい

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真空を保つガラス容器、電極、ヒーター、接続ピンが必要であり、一個の素子が数センチメートル程度になる。

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現代のトランジスタのように、一枚の結晶上へ何百万個、何十億個と並べることはできない。

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壊れやすい

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ガラス容器は衝撃に弱く、フィラメントは電球と同じように断線する。

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空気が入って真空が失われれば、正常に動作しなくなる。

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寿命とばらつき

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カソード表面は使用とともに劣化し、電子放出能力が変化する。

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電極位置、真空度、材料状態によって、管ごとの特性も異なる。

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起動に時間がかかる

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電源を入れてからカソードが十分に温まるまで、すぐには動作できない。

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真空管式ラジオやテレビの電源を入れてから音や映像が出るまで待つ必要があったのは、このためである。

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1940年代から1950年代の電子装置において、真空管は大型で高温となり、消費電力も大きかった。通信設備で使われていた真空管や電気機械式スイッチの信頼性と大きさは、後にベル研究所が固体増幅素子を探す重要な理由となった。(CHM)

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15.真空管は鉱石検波器を消したのか

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真空管が普及すると、鉱石検波器は多くのラジオ用途から置き換えられた。

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真空管は、

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  • 特性を管理しやすい
  • 増幅できる
  • 発振できる
  • スピーカーを鳴らせる
  • 複数段に接続できる
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という優位性を持っていた。

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1920年代半ばまでには、予測可能な性能を持つ真空管が、多くの一般ラジオ受信機で鉱石検波器に代わっていった。(CHM)

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しかし、鉱石の研究が無意味になったわけではない。

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真空管は優れた増幅器だったが、あまりにも大きく、熱く、壊れやすかった。

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技術者たちは再び問い始める。

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真空中を飛ぶ電子を制御するのではなく、結晶の中で同じ増幅を実現できないか。
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鉱石検波器は、整流という一つの機能しか持たなかった。

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だが、その小さな結晶接点に、電子の弁を作れることは分かっていた。

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次の目標は、結晶へ三本目の端子を与え、真空管のグリッドと同じように電流を制御することだった。

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第2章まとめ――電子の弁から電子の文明へ

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1904年、フレミングの二極真空管は、熱電子を一方向だけに流す電子の弁を作った。

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二極管

カソード → アノード
整流・検波
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1906年以降、ド・フォレストの三極管は、その電子の流れの途中へグリッドを置いた。

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三極管

カソード → グリッド → アノード
            ↓
        電流を制御
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小さなグリッド信号が、外部電源から供給される大きなプレート電流を操る。

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この原理によって、

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  • 遠くの電波を増幅する
  • 音声をスピーカーで鳴らす
  • 電話線の途中で信号を再生する
  • 安定した搬送波を発振する
  • 声と音楽を電波へ載せる
  • ONとOFFで論理を作る
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ことが可能になった。

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整流
  ↓
検波
  ↓
増幅
  ↓
発振
  ↓
通信
  ↓
放送
  ↓
計算
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鉱石検波器が電波の中から情報を取り出したとすれば、真空管はその情報へ新しいエネルギーを与え、遠くへ運び、何度でも複製できるようにした。

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電話と無線、ラジオと長距離通信。

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巨大なガラスの灯が、電子の時代を照らした。

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しかし、その光は大量の熱を生み、広い空間と大きな電力を必要とした。

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人類は再び石へ戻る。

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今度は、一方向へ電流を通すだけの鉱石ではない。

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小さな入力で大きな電流を制御し、真空管を結晶の内部へ閉じ込めるために。

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次章では、第二次世界大戦のレーダーが高純度のゲルマニウムとシリコンを要求し、ラッセル・オールのp-n接合から、固体増幅器へ向かう道が開かれていく。

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https://note.com/atom_/n/nf25c04a71e39

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